海上運賃デリバティブ:終わりの始まりか始まりの終わりか?
Abstract
景気後退に伴い海上運賃デリバティブ市場の成長は減速していますが、2009年半ばに市況が回復することを示す兆しもみられます。
海上運賃デリバティブ市場は商品市場から独立した資産クラスとして台頭し、投資家の分散投資を可能にする次なる目玉ツールとして脚光を浴びてきました。セレントの最新レポート「海上運賃デリバティブ:終わりの始まりか始まりの終わりか?」は、運賃デリバティブ業界の発展の経緯を分析しています。レポートでは現在の金融危機が海運市場に及ぼす影響を予測するとともに、同市場をめぐる長期的な投資見通しを示しています。
輸送運賃の高騰を背景に、海運市場は急拡大しました。しかし、世界的な景気後退により輸送需要は減退しています。「スポット運賃はもともと変動性が高いと はいえ、昨今の経済環境がそれに拍車をかけています」と述べるのはセレントのシニアバイスプレジデントでレポートの共同執筆者であるアクセル・ピエロンです。
しかし、海上運賃デリバティブの主要取引所であるImarexや決済機関LCH.Clearnetの取引量は堅調に推移しています。海上運 賃デリバティブの現在の市場規模は1,250億米ドル、スポット市場は約1,500億米ドルとなっています。デリバティブ市場の規模は近い将来に現物市場 を超える可能性があります。
海上運賃デリバティブの主要商品である海上運賃先物契約(FFA)は市場が成熟期にあります。決済機関を通すOTC取引や取引所で取引されるFFAの取引 量は、今や決済機関を通さないOTC取引の取引量を上回っています。こうした変化の背景には、カウンターパーティ・リスクに対する市場参加者の懸念があり ます。一方で、このことはFFAをポートフォリオに組み入れる投資家がさらに増える可能性があることを示しています。運賃デリバティブ市場の地域別のバ リュエーション指数として、今後はバルチックドライ指数などの重要性が増すとみられます。
国際的なFFA市場では、ここにきて市場が成熟段階に 達すると同時に深みを増したことを示す兆候がみられます。その一因として、商品トレーダーや銀行、ミューチュアル・ファンド、ヘッジファンドといった金融 機関の参加者が増えていることが挙げられます。現在、FFAドライ市場の参加者の大多数は運送業者以外の参加者が占めています。
「従来の市場参加者の一部は、他業種プレイヤーの過剰な参入や投機的投資に抵抗を示しています。しかし、こうした参加者が加わることで市場の深みが増すことから、概ね建設的といえるでしょう。その結果、価格形成ポイントが増えて市場の流動性が高まるでしょう」とアンシュマン・ジャスワルは述べています。市場参加者に占める金融機関の割合は2007年の15%から2008年には40%に上昇しています。
セレントは本レポートで海運業界を詳しく分析し、供給過剰の可能性や現在の経済危機が同業界に及ぼす影響を検証しています。また、運賃デリバティブ市場の 構造と原動力(市場参加者、価格形成メカニズムなど)について論じています。最後に、FFA市場向けの主な取引プラットフォームやITソリューションの概 要を紹介しています。