ウェルスマネジメントのIT投資:ウェルスマネジャーの投資優先分野を調査
A Survey of Priorities and Spending Among Wealth Managers
Abstract
ウェルスマネジャーに対する顧客の不信感と自律型サービスへのニーズが高まるなか、各マネジャーは報酬の正当性を示すことを迫られています。アドバイザーやウェルスマネジメント会社はこうした圧力に対処するため、サービスおよび透明性の向上、多様なチャネルへの対応、コスト削減を可能にするテクノロジーの導入を進めています。
セレントの最新レポート「ウェルスマネジメントのIT投資」は、現在金融機関が取り組んでいるウェルスマネジメント関連のプロジェクトについて調査しました。同調査はオンラインで実施し、北米と中南米の130を超える金融機関の200人余りの担当者に回答を依頼しました。そのうち質問の全てに回答したのは26社で、ファミリーオフィス、証券会社、リテール銀行、プライベートバンク、信託会社、独立系の投資運用会社などが含まれています。また、20を超える金融機関からは一部の回答を得ることができ、全体の傾向を把握するのに役立ちました。
レポートは、ウェルスマネジメントに関する幅広いテーマ、具体的には、全体的な戦略、システム導入および投資、ウェルスマネジメント・プラットフォームを導入する際の障害、現行の投資家向けサービス、アドバイザー向け機能、今後のウェルスマネジメント関連投資の優先分野などを取り上げています。
今回の調査を通じて、以下の点が明らかになりました。
- ウェルスマネジメント関連システムを導入する際、北米の金融機関は中南米の金融機関に比べて長い期間をかけている。
- ウェルスマネジメントの大部分は、過去1年間に戦略を変更している。
- 第三者が開発したソリューションと自社開発システムを併用しているウェルスマネジャーが最も多い。
- 今後、ウェルスマネジャーは顧客とのコミュニケーションツール(CRM、顧客報告ツール、顧客対応ツールなど)の追加導入を検討するとみられる。北米・中南米にかかわらず、これらは引き続き優先順位が高い分野となっている。
- ウェルスマネジャーはアドバイザーおよびエンドユーザー向けモバイルアプリケーションの導入を進めているが、そうした動きはスピード感に欠けている。特に、中南米市場ではモバイルツールの普及が遅れている。
「今回の調査で、北米の金融機関はウェルスマネジメント関連システムの導入で中南米の金融機関に先行していることが明らかになりました。さらに、北米の金融機関は既存システムの更新を検討しているのに対し、中南米の金融機関はいまだ戦略やシステムの初期導入段階にあります。中南米市場は今後も成長と成熟化が続くとみられ、それに伴ってウェルスマネジメント関連システムの導入はますます重要視されるでしょう」と、セレントのアナリストでレポートの共同執筆者であるアレキサンダー・カマルゴは述べています。
「どの地域のウェルスマネジャーも、運用目標と資産内容の一覧を提示するだけでなく、顧客への情報伝達手段を改善するためのツールをアドバイザーに提供することを目指しています。その結果、CRMシステムや顧客報告ツールを追加導入するケースが相次ぐでしょう。また、透明性の向上と管理の強化を求めるエンドユーザーに対応するため、ウェルスマネジャーは様々な自律型ツールを提供するようになっています」と、リサーチ・ディレクターでレポートの共同執筆者であるイザベラ・フォンセカは指摘しています。
レポートではまず、回答した金融機関の資産規模、事業形態、拠点の場所といった主な特徴を紹介し、各社のウェルスマネジメント戦略を様々な角度から分析し、顧客セグメントごとに主な変化と優先順位を明らかにしています。さらに、これらの金融機関によるアドバイザー向けシステムの利用状況、機能、今後の優先課題について詳しく説明しています。販売チャネルについても取り上げ、既存および将来のチャネルが持つ戦略的な重要性を評価しています。最後に、2012年のIT投資動向を予測し、ウェルスマネジャーが自社のテクノロジープラットフォームを評価する際の指標も示しています。