欧州の証券取引所を巡る最新事情
Abstract
取引所の再編、金融商品市場指令(MiFID)の施行、代替取引システムの台頭などは、欧州の資本市場に大規模な構造的変化をもたらすでしょう。
セレントの最新レポート「欧州の証券取引所を巡る最新事情」では、取引所の再編や、先のニューヨーク取引所(NYSE)とユーロネクストの合併といった動きはあるものの、欧州の資本市場は、今なお国ごとに細分化された状況にあると指摘しています。さらなる再編、MiFIDの施行、代替取引システム(ATS)の台頭、流動性の滞留などは引き続き欧州資本市場に変化をもたらすでしょう。欧州の証券取引所は、すでに最近の変化による恩恵を受けています。例えば、2006年の株式売買高は前年比35%増と大幅に拡大しています。また、欧州取引所の利益率は平均34%と米国の取引所を上回っています。
しかし、このような活況に沸く欧州取引所も、MiFIDや新たな競合といった脅威に直面しています。MiFIDは取引所、多角的取引システム(MTF)、社内クロスを行う証券会社などの取引執行機関の間の競争を促すことを目指しています。従って、ATS(主にMTF)はMiFIDの施行を欧州の既存取引所に攻勢をかける機会と捉えています。これに対し、取引所側も必死に防衛を図るとみられます。
「欧州の主なATSはいまだ十分な流動性を確保できていないため、取引所にとって目先の脅威にはなっていません 」と、セレントのアナリストでレポートの共同執筆者であるペリン・フィオリナは述べています。「実際、当局がATSの設置を促したからといって多くの注文を獲得できるとは限らないからです。」
このほかレポートでは以下の点も指摘しています。
- 欧州の取引所は、債券売買においては出遅れている。
- 欧州市場における電子取引1件当たりの平均売買高は過去3年間29,000ユーロ(約475万円)弱の水準を維持しており、 米国市場の平均(2006年はNYSEが約13,600ユーロ(約220万円)、ナスダックは6,700ユーロ(約100万円))を大幅に上回っている。
- 2006年の欧州IPO市場におけるシェアは、ロンドン証券取引所(LSE)が全体の53%を占めた。
- LSEは欧州市場全体の株式売買代金の36%、売買高の20%を占め、いずれにおいても欧州最大の取引所となっている。
またレポートは、主な取引所の株式およびデリバティブ取引戦略、市場データ、MiFID、ATSとの競合などについても分析しています。
レポートは29図と8表を含む全48ページで構成されています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2007年5月30日の仲値(三菱東京UFJ銀行公表による)を参照。