インド資本市場のトレンドと今後の展望
Abstract
インドのキャピタルマーケットは堅調な成長を続けてきましたが、世界的な金融危機を機に減速を強いられています。しかし2009年初め以降、回復基調にあり、関連指標は80%を超える伸びを示し、時価総額が2倍以上に拡大するなど、世界で最もパフォーマンスの高い市場の1つとなっています。
セレントの最新レポート「インド資本市場のトレンドと今後の展望」は、同市場の様々なセグメント(株式、債券、デリバティブなど)におけるトレンドと成長機会を分析しています。レポートは、各セグメントの成長要因と発展の阻害要因に焦点を当てています。また、個人および機関投資家向け市場のトレンドを調査し、最近の個人投資家向け市場の停滞を招いている原因を明らかにしています。
今回の調査では、主に以下の点が浮き彫りとなりました。
- インドの株式市場はリターンが高く、国内および外国人投資家のレベルがともに高いといった魅力的な要素が多い一方、市場参加者が限られ、少数の銘柄に取引が集中するなど市場の深さと幅において未熟である。
- インドの債券市場は未開拓で、社債市場の規模は小さい。社債市場の発展を促すための規制改革も進められているが、本格的な成長を実現するためには持続的な努力と長期的な取り組みが欠かせない
- インドのデリバティブ市場は現在も発展途上にあるが、さらなる発展には商品や投資家基盤をさらに拡充する必要があるだろう。また、インド市場は、上場デリバティブ商品取引において、世界の主要市場の1つとなっている。金融危機以降、世界的にデリバティブ商品の規制を求める声が強まっており、こうした商品の取引所取引の体制が整っているインドは優位にある。
- インドでは国内証券会社が外資系証券会社の攻勢に対抗することで市場の成長と競争が加速しており、そこではテクノロジーの導入が重要な役割を果たしている。
- 機関投資家向け市場では、アルゴリズム取引に必要な金融情報交換(FIX)とダイレクトマーケットアクセス(DMA)が 主な成長分野となっている。
- FIXが急速に普及し、DMAは大手機関投資家のほとんどで導入済みである。セレントの予測では、2012年には準大手の間でもDMAの普及が広まるとみられる。
- アルゴリズム取引や取引自動化でさらにステップアップを図るためには、規制当局がアルゴリズムや制約のないDMAの承認をより柔軟に行い、参加者がこれらのサービスを顧客に提供できるようにする必要がある。それまでは執行のためのアルゴリズムプログラムが成長分野となり、特に取引所間の競争が激化するなかで新たな成長機会をもたらすだろう。
「インドの強みは規制環境が整っていることにあり、そのため世界的な金融危機による打撃がさほど大きくならず、その後の回復も早かったといえるでしょう。規制当局は拡大する市場に慎重な姿勢をとっており、市場の透明性と投資家の保護を常に最重要課題としています」とセレントのインドフィナンシャルサービスグループのアナリストでレポートの共同執筆者であるアリン・レイは述べています。
「インド市場では、FIXやDMAの導入に高い関心が集まっています。その主な理由として、海外の機関投資家からの投資が増加するなかで市場シェアを拡大するには、彼らのシステムおよび要件との互換性を提供する必要があることが挙げられます。しかし、アルゴリズムの利用に関しては、取引所の承認など、規則や規制が設けられているため、多くのトレーダーが二の足を踏んでいるのが現状です。 こうした規則が改正されない限り、アルゴリズム取引の普及は進まないでしょう」と同じくアナリストで共同執筆者スリークリシュナ・サンカーはコメントしています。
本レポートは、インド市場の成長を次のステップに進めるためのテクノロジーの採用と、市場のさらなる進化に不可欠な規制改革について論じています。
このレポートは16図と6表を含む38ページで構成されています。