リスク管理の未来像 パート3:デジタル化の津波に備える【抄訳版】
Abstract
(英文レポート"Back to the Future in Risk Management, Part 3: Preparing for the Digital Tsunami "の重要部分を抽出し翻訳しました。)
金融機関のCRO(チーフリスクオフィサー)は、デジタル化が顧客対応および取引バリューチェーンの重要部分にどのような影響を及ぼすかを見極め、さらなる対策を練るべきでしょう。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | 金融業界のデジタル化はどの程度まで進んでいるか? |
2 |
デジタル化はリスク管理業務とIT上の可能性にどのように影響するか? |
3 | リスク管理部門にとって、バリューチェーンのどの部分に変化のチャンスがあるか? |
金融業界はここ数年、規制改正や構造改革への対応で大きな成果を上げてきました。一方、新たなデジタル化の提案や業務の枠組みが出現したことに伴うビジネスチャンスと脅威は、新たな競争やディスラプティブな影響が生じる可能性を示しています。事業リスク、財務リスク、オペレーショナルリスクの観点からみて、これらを見過ごすことはできません。
シリーズレポートの第3弾となる本レポートでは、デジタル化の流れがリスク管理とコンプライアンス業務に及ぼす影響について分析しています。
リスク管理および測定に関しては、インターネットの時代より以前から、特に分析、プロセスの自動化、報告/ビジュアル化といった分野で長年にわたりテクノロジーが中心的な役割を担ってきました。しかし、従来と変わった点(むしろ加速している)は、デジタルテクノロジーとインターネットの出現が第二次および三次のビジネスモデル革命を引き起こしていることで、 その根底には現物・仮想領域の拡大、サービスデリバリーおよび顧客との相互関係モデルのイノベーション、デジタルネットワーク組織の形成といった動きがあります。新たなリスク管理機能を構築する上で、これらはリスクの源であると同時に潜在的な実現可能手段でもあります。
「リスクのバリューチェーンをみると、金融機関が様々な分野のビジネスモデルとリスク管理業務モデルをデジタル化することでビジネスチャンスが広がることがわかります。取引バリューチェーンの再設計・デジタル化が進むにつれ、金融機関はリスク管理やコンプライアンスの業務プロセスでも同じような変革を迫られるでしょう。特に、取引のワークフローと直結する業務においてはその傾向が強まるとみられます」とセレント証券プラクティスのリサーチディレクターでレポートを執筆したキュビラス・ディン は述べています。
金融機関は、急速に進化する環境下でデジタル化やフィンテックのディスラプターをめぐる動きを見極め、バランスをとりつつ思慮深く対応する必要があります。規制強化が進む現状では、特に少ないリソースを最大限に活用することが不可欠となります。
レポートでは、リスク管理のバリューチェーンの重要側面を分析し、影響力を持つための最大のビジネスチャンスを明らかにするとともに、CRO(チーフリスクオフィサー)がリスク管理業務モデルのデジタル化に対応するための計画を策定・執行する際のアクションプランを提示しています。
本レポートは9図と1表を含みます。