ブラジルの金融機関におけるリスク管理:リスクオン/リスクオフ環境下での強化
Abstract
ブラジルの金融機関によるリスク管理関連のIT投資は年平均7.2%のペースで拡大し、2017年には13億ドルに達すると予想されます。
ブラジルは中南米地域で最も規模が大きく、最も発展した市場です。同国の銀行業界および資本市場のインフラは、急速な成長と進歩を遂げてきました。しかし、ここ数年は成長が減速傾向にあり、短期的な見通しも不透明感が増しています。
本レポートはブラジルの金融セクターのIT投資とリスク管理システムへの投資を左右する需給動向について分析しています。また、成長に向けた堅固な基盤の再構築を目指す金融機関と同国内での存在感を高めたいソフトウェア/ITサービスプロバイダーが避けて通れない課題にも焦点を当てています。
「ブラジルの金融サービス市場は、成長市場から真の展望が開けにくい市場へと移行しつつあります。そのため、同国の金融機関は成長軌道の維持と賢明なリスク管理を可能にする確かな基盤を構築する必要があるでしょう。さらなる成長を目指す国内最大手の金融機関は、世界市場で通用する持続可能な基盤を築くことが求められます」とセレント証券グループのリサーチディレクターでレポートの共著者であるキュビラス・ディンは述べています。
同国におけるリスク管理システムへの投資総額は年平均7.2%のペースで拡大し続け、2017年には12億9,300万ドルに達する見通しです。リスク管理システムへのニーズ拡大のカギを握るのは規制強化の動きや、より先進的なリスク管理機能の進化を促がすビジネス上の要因でしょう。具体的には、一元的なリスクデータインフラ、社内のリスクモデルのアップグレード、バーゼルⅢに定められた流動性リスク報告と自己資本充実度評価プロセス(ICAAP)への準拠、リアルタイムベースの先進的な与信決定/スコアリング、全社規模のストレステストなどが挙げられます。
「短期的には逆風にさらされているものの、ブラジルが投資家、金融機関、サービスプロバイダーにとって魅力ある長期的なビジネスチャンスを提供していることに変わりはありません。ただし、目先の深刻な状況を打開するためには、高いハードルを乗り越えなければなりません」と証券グループのアナリストでレポートを共同執筆したデニス・コンは指摘しています。
金融機関はシステムの効率性をさらに向上させ、次世代のリスク管理インフラに投資するほか、コンプライアンスの発想からリスク管理業務にビジネス価値を見出す考え方へと進化する必要があるでしょう。サービスプロバイダーが価値提案を行う上では、製品および実装機能のローカライゼーション、ブラジルの顧客の弱点に対応するためのきめ細かなアプローチ、コスト効率の高いデリバリーモデルなどがカギとなるでしょう。