ウェルステックが切り開くアドバイザービジネスの新境地
2022/03/27
Eiichiro Yanagawa
日本のウェルスマネジャーへの示唆
Key research questions
- リテール証券ビジネスの現状:グローバルと日本のギャップは?
- モデルアワードプログラムに見るウェルステックの未来形とは?
- ウェルステックが加速するリテール証券ビジネスの未来形とは?
Abstract
セレントは、モデルアワード受賞プロジェクトを含むグローバル大手ウェルスマネジメント(WM)企業のユースケースを通じて、ウェルステックが加速する資産運用ビジネスの未来形を議論します。ハイブリッドアドバイス、デジタルオンボーディング、アセットアロケーションの自動化など、最先端のウェルスマネジメントサービスにおけるテクノロジーの優先領域を特定し、ゼロコミッションや独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)の時代に突入した日本のリテール証券業界への示唆を探ります。
日本のリテール証券業界において、大手証券会社の戦略には大きな差異が顕在化しています。ネット証券各社は、現物株取引でも「手数料ゼロ」を競う時代に入り、銀行との包括提携も見られます。個人にチャットで助言しつつ、独立系金融アドバイザー(IFA)に相談できるサービスも開始されており、大手を中心に、証券業界の地殻変動に向けたマグマは蓄積しつつあります。一方、資産運用会社は長引く構造変化に苦しんでいます。運用環境の不透明感は一層のコスト削減圧力に結び付き、生き残りをかけた各社は、ディストリビューション・パワーハウス、ソリューション・プロバイダー、ベータ・ファクトリー、アルファー・ショップ、オペレーショナル・アルファ・センター(バイサイド・バックオフィスのアウトソーサー)など、自社の強みを生かした戦略シフトが必須です。
グローバル(特に米国)におけるWMビジネスの拡大と進化をドライブするのは「ウェルステック」です。日本の場合、業界構造変化の兆候は見られますが、テクノロジーがイネーブラーとしてその成功・目的達成を可能にする、人と組織における中核的な手段とはなっていません。