中核的なトレーディングテクノロジーのクラウドへの移行はキャピタルマーケッツのフロントオフィスに変革をもたらす
Abstract
セレントは2017年に発行したレポート「クラウドによる資本市場の再構築」で、キャピタルマーケッツが転換点を迎えているとう大胆な見解を示した。時が経ち現在では、資本に制約があり、規制による負担も大きい金融機関が将来のアーキテクチャや事業を再配置するにあたり、クラウドモデルを介してより安定、安価かつ安全なインフラストラクチャーの構築を目指す動きが広がっている。
セレントの最近の調査によると、今回の世界的なパンデミックの影響により、証券業界ではクラウドの採用を計画する企業が急増している。セレントがインタビューを行った企業のほとんど(67%)が、2024年までに「クラウドファースト」になる(つまり、新しいアプリケーションをクラウドネイティブとして構築する)か、クラウドを全面的に採用するかのいずれかを想定している。さらに最近では、中核的なトレーディングインフラのクラウドへの移行が加速している。
これにより、トレーディング市場の参加者がワークフロー全体の効率性を実現する新たな機会が生まれており、低遅延のトレーディング・ベニューがクラウドでホスティングされるようになるとセレントは考えている。クラウドへの移行によるフロントオフィスへのメリットは、実質的かつ変革的なものになるだろう。
現在も中核的なトレーディング機能にオンプレミスモデルが採用され続けている理由は多数ある。クラウドは多くのキャピタルマーケッツで採用されているが、その副産物として、フロントオフィスの値付けと取引執行は、クラウドの魅力とはある程度無縁の状態に置かれている。株式市場や外国為替市場、そして最近では債券市場でも、低遅延の電子取引をサポートするために、高度に専門化されたハードウェア、ソフトウェア、接続性に依存している一方で、債券市場のような音声仲介市場では、依然として顧客との関係性や情報の非対称性に依存しており、多くの場合、フロントオフィスでの取引はオンプレミスのシステムによってサポートされている状況が続いている。しかし、ネットワーク技術を中心とした最近のクラウドの進歩により、ようやく主流の取引所がクラウドに移行するためのサポートが提供されるようになった。
セレントのレポートシリーズ「債券トレーディングテクノロジーの未来像」では、低遅延の取引についてもクラウド上での取引を可能にする最近のテクノロジーの進歩について調査している。この変化の重要性は、昨年のセレントのブログ記事「キャピタルマーケッツのフロントオフィスークラウドの最後のフロンティア?」にある「キャピタルマーケッツはネットワークプレイであり、その中央に位置するのは、市場、取引所、流動性の場ある。こうした場所でコアシステムのクラウドへの移行が始まれば、業界の他の部分にも確実に広がっていくだろう。」という記述に見事に集約されている。
こうした動きは順調に進んでおり、その結果、本レポートで考察し、さらに次の「債券トレーディングテクノロジーの未来像」レポートシリーズ(パート3では、債券の価格発見と取引執行に焦点を当てている)の債券トレーディング市場全体の文脈で示したとおり、キャピタルマーケッツへの影響が生じるだろう。