アジアの証券取引所の現状
Abstract
ここ数年、世界の証券売買高は高い伸びを記録し てきました。最大の牽引役となったのはアジアの証券取引所における売買拡大で、2002~2007年の株式売買高の伸びは年率30%近くに達しました。ア ジアの証券取引所の売買高は現時点では米国の2大証券取引所を大幅に下回る水準ですが、近い将来には前者が後者を逆転するとみられます。
セレントの最新レポート「アジアの証券取引所の現状」はアジア地域にある16の証券取引所を比較 し、2002年から2008年にかけての主なトレンドを検証しています。アジアの上場証券取引所は高い成長を実現し、極めて高い利益を上げています。 2007年にはアジア地域全体の売買高の80%、売買代金の86%を域内の6大証券取引所が占めました。しかし、世界的な金融危機の影響で2008年は売 買高・代金が大幅な落ち込みを見せています。
アジアの証券取引所は多様なサービスから収益を上げています。最大の収入源は株式取引ですが、デリバティブ取引、上場および決済サービスのほか情報サービ スも主な収入源となっています。アジアでは2003年以降新規株式公開の件数が急速に増えており、上場関連収入も増加傾向にあります。また、市場データに 対するニーズの拡大を背景に情報サービスの拡充も優先課題となっています。
アジアのデリバティブ市場はアジア危機発生後も拡大を続け、域内の証券取引所における2007年のデリバティブ契約は43億件に達しました。中でも、韓国 証券取引所が手がけたデリバティブ契約は全体の3分の2近くを占めています。様々な商品を提供している取引所もあれば、少数のデリバティブ商品に特化して いる取引所も見られます。アジアで最も頻繁に取引されているのは株式指数オプションで、商品先物と株式指数先物がこれに続いています。
一方、アジアでは債券市場の開拓は依然として進んでいません。アジアの取引所に上場されている債券はその件数の伸び率で上場株式を下回っています。債券の 売買代金も過去6年間ほとんど変化していません。ただし、2008年は株式市場の成長ペースが減速したのに対し、債券市場は概ね同じペースで成長を続けま した。
「世界的なトレンドを受け、アジアの取引所業界でも構造やガバナンスモデルに大幅な変化が起きており、取引所の多くは株式会社化されています。取引所は高 い収益性を確保しつつ成長を続けており、平均利益率は50%近くに達しています」とセレントのアナリストでレポートを執筆したアリン・レイは述べています。
本レポートは28図と2表を含む34ページで構成されています。