企業顧客データのルネッサンス:老犬のための新しい芸
Abstract
セレントは既刊の関連レポート「トレジャリーインサイトを引き出す:インテリジェントソリューションへのロードマップ」(2023年1月)で、企業財務におけるキャッシュマネジメントと流動性の優先順位のほか、銀行が顧客に対してビジネスに関するより高度なインサイトと推奨事項を提示できるようなソリューションを提供する必要性について概説した。また、トランザクションデータの価値と重要性、および既存の一連の情報レポーティング(IR)機能(特にデータ)をコーポレートバンキングで活用できる可能性についても紹介した。
情報レポーティングとそれに関連する顧客(財務部門)向けデータに価値があることに疑いの余地はないが、銀行からはトランザクション・バンキング商品の中で最も地味な商品の1つと見なされがちである。しかし、セレントは市場のトレンドに関する調査と分析を踏まえ、情報レポーティングのデータはコーポレートバンキング顧客にその価値の転換をもたらすルネッサンスを起こすと考えている。これは、レポーティングアプリケーションの機能を微調整することや、APIを加えることによってではなく、財務アドバイザーとしての関係を構築するうえで、IRの基礎となるデータコンポーネントが主要なビルディングブロックになると認識することによって実現する。IRのコアコンポーネントは、いかなるインテリジェントな財務機能を構築するためにも不可欠となることから、セレントはビルディングブロックやファウンデーションという専門用語を慎重に選択している。
基本的なレポーティングにおいて価値の高いデータ資産が、どのように次世代の運転資金ソリューションの基盤になるのか?大手銀行は、基本的な情報レポーティング(およびその基礎となるデータ)を、財務に関するインサイトと推奨事項を提示する次世代ソリューションの重要なコンポーネントという位置づけに引き上げつつある。実際に、IRの商品セットの基本コンポーネント(豊富な構造化データ、情報やレポートへのオムニチャネル/マルチチャネルアクセス(APIフレームワークによるものを含む))は、次世代のインテリジェントな商品・サービスのビルディングブロックとなっている。オーダーメイドのシステムとして構築されるか、ベンダープラットフォームとして構築されるかにかかわらず、これらのビルディングブロックは、AIとマシンによってかつてない規模で顧客のインサイトを生成する野心的な商品ロードマップをサポートするために強化されるべきである。セレントはデータルネッサンスの要素を以下のように分類している。
- 技術的なビルディングブロックの特定
- データサプライチェーンの強化
- 業界の主要なイニシアチブと社内の変革プログラムの活用
- バンキングプラットフォームとデータ/AIベンダーの役割を理解
銀行とベンダーが商品データの要件やアーキテクチャの見直しを進めていることから、ISO 20022などの主要なイニシアチブを活用してデータの質、充実度、可用性(いずれもAIの向上に寄与するもの)の向上を図る機会が生じている。顧客データのルネッサンスに投資する銀行には、顧客との関係の深化と収益化可能なデータソリューションがもたらされるだろう。