商業貸し付けの信用リスク管理:ビジネスプラクティスと リスク管理システムの調査
Abstract
企業を取り巻く経済環境が厳しさを増す中、商業貸し付けを行う金融機関はテクノロジーの利用による業務規律の向上や合理化をさらに進めることを求められるでしょう。商業貸し付けを手がける世界の金融機関のリスク管理システムに関する調査結果から、各金融機関が商業信用システムの利用を最適化するためには価値重視のアプローチをとる必要があるとセレントは提言しています。
景気の不透明感が高まる中で、多くの銀行では融資慣行に変化が生じています。一般にリスク環境が悪化すると金融機関は貸出基準や審査の厳格化や、債務整理部門の人員を動員して与信管理に充てるといった伝統的な「防衛策」を講じます。
出典:セレント
しかし、事業環境の悪化局面で金融機関が合理化を進めるにあたっては、重要な機能を識別し、それに磨きをかけて厳しい経済環境を乗り切れるよう一段の業務改善を行うことが活路となるでしょう。具体的には担保管理、全社規模の与信リスク報告/モニタリング、「安定した」早期警告システム、債務処理の効率化などで、これらの業務機能を強化することで大きなメリットが得られます。商業貸し付けを行う世界の金融機関を対象とした今回の調査では、これらの機能をサポートするテクノロジー手法、ベストプラクティスの条件、成功要因(UCIの管理、担保および損失に関するデータなど)を業務プロセスとシステムの両面から明らかにしています。
「市場の混乱、マスコミによる過熱報道、融資残高の減少などにもかかわらず、金融機関の指針や中長期目標などは必ずしも貸出業務の縮小に向かうのではなく、ポートフォリオにおける高リスク案件の見直しと整理を進めるべきでしょう」と、セレントのシニアアナリストでレポートを執筆したキュビラス・ディンは述べています。
いかなる景気後退局面や市況悪化の状況においても、必ず勝者と敗者が生まれます。その差は①伝統的な防衛策の執行能力②最適な信用リスク管理システムの強化③信用リスクデータの『連結性』を高めることによる利用可能なデータの抽出④経済環境の変化に対する動的な対応―などの違いから生じるといえるでしょう。セレントの調査は、現時点でこれらの分野に対する投資が不十分であり、選別的かつ積極的なアプローチがすぐに大幅な業績改善に結びつく可能性があることを示唆しています。
「先見性の高い金融機関は、業務合理化の過程で重要なのは重要機能に共通の価値重視アプローチを導入して商業向け与信システムの利用を最適化し、それに合わせて信用リスク管理システムに投資を集中させることであると認識しています」とディンは付け加えています。
本レポートは北米、欧州、アジアで商業貸し出しを行う20以上の金融機関を対象とする調査結果をまとめたもので、これらの金融機関が抱える既存のリスク管理システムの問題点や業界の業務慣行および地域による違いを明らかにするとともに、ベストプラクティスを実現するためのヒントや投資条件を提示しています。また、リスクシステムの管理能力も検証しています。
本レポートは17図と5表を含む46ページで構成されています。