保険会社のリスク戦略:欠陥リスト
2008/10/21
Abstract
金融危機が飛び火することは疑いの余地がありません。これにより、保険会社のバランスシートはあらゆる面で大きな影響を受けるとみられます。信用市場と株式市場の低迷は続く見通しであり、既存の保険契約者の動向に加え、新規契約の件数や商品構成にも変化が生じる可能性があります。
ここ数ヵ月間の流動性やクレジット・イベントは、かつてない様相を呈しています。北米および欧州で大手投資銀行や商業銀行が破たんする事例もみられます。クレジット・デフォルト・スワップのスプレッド拡大や株価下落など、保険会社は引き続き厳しい圧力にさらされています。
大手銀行の破たんという異例の事態を目の当たりにしても、保険会社の多くは自社のリスク管理体制を「誤判定」している現状に甘んじたままです。セレントの最新レポート「保険会社のリスク戦略:欠陥リスト」は、多くの保険会社の現在のリスク管理体制について以下の4つの欠陥を指摘しています。
1) 有効なリスク管理の仕組みの欠如
2) 保険業界の「利益神話」
3) リスク選好とリスク管理の意思決定がばらばら
4) 早期警告機能の欠如とリスク関連情報の不足
保険会社と銀行ではリスク・エクスポージャーや流動性ニーズが異なりますが、昨今の事例をみる限り、金融業界は複雑で不透明なチャネルを通じて密接に結びついていることは明らかです。今後数年で規制強化がどのように進むのかは現時点でまだ予想できません。しかし、1つ確実に言えるのは、米国では規制の枠組みが大幅に見直され、規制の手法が多様化するとみられることです。