2014年 英国の保険市場:ビジネスおよびIT上の優先課題
Abstract
英国および欧州経済が低迷し、長引く低金利政策が依然として重しとなっているため、英国の保険会社のIT投資は力強くはありません。しかし、ここ数年と比べれば、楽観的な姿勢が広がりを見せ、販売および新規提案を通じた成長を中心に活動が活発化し始めています。
「デジタル」は、モバイルおよびデータに関するテクノロジーの進歩が事業にもたらす影響に向き合う中で浮かび上がる共通のテーマです。大規模な改革プロジェクトに付随するものが多いとはいえ、IT予算はわずかながら増加しています。
2015年を見据え、2014年のIT投資は以下の機能に向けられつつあります。
- 販売。
複数のチャネルを通じた各サービスの効率的な管理、ポータルおよびモバイル開発、ビジネスプロセスの管理、統合に向けた取り組みが進行中で、その多くが「デジタル」と連携しています。 - コアビジネスのトランスフォーメーション。
損害保険会社においては、新たな特色ある提案をサポートし、戦略的なコアプラットフォームを変革するコアシステムへの継続的な投資がみられます。早い段階で近代的なパッケージソリューションを導入した一部の保険会社は、最新の状態を維持できるよう、アップデートに備えています。一方、生命保険会社においては、最も古い商品を運用しているプラットフォームを転換する方法を検討しています。これらの保険会社については、引き続き、アウトソーシングを利用する傾向が強くなっています。 - 情報セキュリティ。
提携先や顧客がオンラインやモバイルを通じて利用できる情報が増えるのに伴い、多くの保険会社が情報セキュリティプロセスを見直しています。 - データおよびアナリティクス。
アナリティクスおよびビジネスインテリジェンス・ソリューションに対する投資は引き続きみられます。新たな情報源を利用して情報を増やし、ビジネスに生かしている保険会社もありますが、ある保険会社が述べているように、「すでに持っているデータを有効に活用することが優先です」
「競争が激しい市場であること、また低金利環境による財政の締め付けが続いていることから、英国の保険会社も世界中の多くの成熟市場と同様に圧力にさらされています。このような状況が続く限り、今後も引き受け、業務効率、販売機能といった中核業務のパフォーマンスを向上させる取り組みを支える投資が中心となりそうです」と、セレント保険グループのシニア・バイス・プレジデントで本レポートの著者であるジェイミー・マクレガーは述べています。
2014年から2015年にかけては、保険会社は効率化の追求、とデジタルをめぐる野心的な取り組みによる成長からの新たな需要、とのバランスを取りながら、慎重に投資を進めていくとセレントはみています。経済的ショックがなければ、構築されたデジタル基盤が定着し始めるとともに、利用できる情報が増加することによって、インフラおよび情報セキュリティに関する新たなニーズが見込まれるため、2015年にかけてIT予算は緩やかに拡大すると予想されます。
本レポートでは、2015年に向けて2014年にIT投資を主導するビジネス上のテーマを取り上げ、デジタル化、レガシー&エコシステムのマイグレーション、イノベーションといった優先課題についても詳しく見ていきます。また、IT予算に対する影響、効率化と成長のバランスを取る上でCIOが直面する課題についても考察します。