外為取引の電子プラットフォーム
Abstract
近年、外為取引は増加の一途をたどっていますが、その中で電子取引の導入が急速に拡大しています。セレントは、2009~2010年には、外為市場の1日当たり売買高は3~4兆ドル(350~470兆円)に達し、その内、銀行間直物市場取引の75%、対顧客取引の50%を電子取引が占めると予測しています。
セレントは、最新レポート「外為取引の電子プラットフォーム」の中で、売買高の増加、電子取引の導入、変革の要因などの観点から、外為市場の状況を分析しています。また、Reuters Dealing 3000やEBSといった銀行間取引プラットフォームや、FX Connect、FXall、Currenex、Hotspot FXなどの対顧客取引プラットフォームに関する検証もしています。さらに、ロイターとシカゴ商品取引所が共同で取り組んでいるFXMarketSpaceについて、概要を説明しています。
外為市場は全体的に成長基調にありますが、詳しく調査してみると微妙な差が浮き彫りになってきます。主に企業が国際貿易事業において為替リスクのヘッジ目的で取引する「実質マネー」は増加しているものの、ヘッジファンド業界における投機的な取引に比べると、その伸び率は低くなっています。誰もがヘッジファンドに対する懸念を抱いてはいますが、その実態は多様です。ヘッジファンドは、モデル取引、方向性に基づく取引、さらにはモメンタム取引など多種多様な戦略に基づいて投資しています。従って、取引戦略によってヘッジファンドそれぞれのニーズは大きく異なるため、選好する取引場所や機能も大幅に違うのです。
セレントのアナリストで今回のレポートを執筆したアクセル・ピエロンは次のように述べています。「新規参入するバイサイドの市場参加者の存在が顕著になり、彼らによって流動性の向上や創出がなされることで、外為市場には変化の風が吹き始めています。銀行間取引と対顧客取引の市場区分はすでに崩れつつあり、銀行間取引プラットフォームの大手2社は、既存の枠を超えてこうした収益性の高い新規顧客の獲得に乗り出しています。今後は、外為市場が取引所モデルを採用するか否かではなく、その採用時期が焦点になるでしょう。」
銀行間取引電子プラットフォームの普及により、利ざやが小さくなり、市場の透明度が高まりボラティリティが低くなった結果、小規模な銀行は市場から押し出されることになりました。今や、外為市場は利ざやの小さい取引が大量に行われる場となり、大手金融機関やスペシャリストでなければ生き残れないのが実情です。セレントでは、銀行間直物市場取引の75%、対顧客取引の50%を電子取引が占めていると予測しています。
ピエロンはさらに次のように指摘しています。「ステートストリートによるCurrenexの買収は、外為電子取引プラットフォームの統合の波を予兆するものであるとの見方もありますが、私はこの見解に懐疑的です。この買収は、時代遅れのテクノロジーや新規顧客セグメントへの進出といった、ステートストリートとFX Connectが抱えている課題に対するひとつの解にすぎません。実際には、Lava社が外為銀行間取引プラットフォームの開発を、FXallが対顧客取引の新プラットフォームの開発を進めるなど、多くのプロジェクトが立ち上げられています。この市場は規模が大きく、顧客セグメントが多様化している上、単一ディーラープラットフォームも数多く存在することから、しばらくは市場参加者による統合の動きが続くと思われます。ICAPによるEBSの買収やKnight CapitalによるHotSpotFXの買収が示すように、統合の目的は、マルチアセットの取引機能を提供するための相互補完的なものになるでしょう。」
本レポートは14図と3表を含む全41ページで構成されています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2007年2月28日の仲値(三菱東京UFJ銀行公表による)を参照。