保険に共同開発を生かす:R3ブロックチェーンコンソーシアム
Abstract
テクノロジーのカギはスピードです。そして、共同開発においては、「参加なければ得るものもなし」を覚えておくべきでしょう。保険会社は、共同開発で銀行・証券業界が得た学びを活用するチャンスがあります。しかしこれらの恩恵を受けるためには、自ら議論に参加しなければなりません。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | コンソーシアム型開発のメリットとは? |
2 |
R3などのコンソーシアムが機能する仕組みは? |
3 | 保険業界は銀行・証券業界のR3イニシアチブから何を学べるか? |
金融サービスに新しいテクノロジーを導入するチャンスと同時に、その採用や自動化をめぐって新たな課題が生じています。これらに対応するために、新しい開発手法が登場し、アジャイルなテクニックの利用が増加しつつあります。各社は実験能力の強化や学習・イノベーションの加速を目指して、イノベーション研究所に投資しています。また(ソリューションを自社でゼロから構築するかわりに)しばしばFintechやInsurtechの新興企業と提携してソリューションを共同開発し、その結果として生まれる知的財産を共有しています。従来型システムインテグレーターとのプロトタイプ作成プロジェクトも増えています。
セレントは、新規テクノロジーの導入機会を生かすために、共同開発を提唱します。また、分散型台帳テクノロジー(DLT、ブロックチェーン)や、このテクノロジーに特有の協調アプローチとの親和性についても検証します。この点について実践的な理解を深めるために、DLTコンソーシアムであるR3の2つのプロジェクトを詳細に説明します。それらの結果を分析するとともに、保険会社がどうすれば他の金融サービス業界が学んだことを生かすことができるか明らかにします。
コンソーシアム型モデルの共同開発では、意見の多様性によってリスクが減少し、設計が強固になります。DLTの場合、コンソーシアムがネットワーク効果、コストの相互化、コンセンサス、プラットフォーム選択を促進しています。
R3は手数料ベースの会員制組織で、構造的開発アプローチを用いてDLTの研究を促進します。アイデンティティ管理や照会データ管理の分野で銀行・証券会社向けに開発されたソリューションは、保険業界に直接応用がきくものです。
「共同開発モデルを採用しない保険会社は、そうしたモデルと同等のインサイトや効率性を獲得する方法を自力で創出することが必要になります。そうしなければ競合企業に後れを取ってしまうでしょう」
「コンソーシアムによる導入実験の全体的な結果は、まだ現れ始めた段階です。新規テクノロジーを用いた新たな業界ビジネスモデルを導入することは簡単ではありません。そして完了したプロジェクトについても、この先、世界的な学びをうまく一般化していけるかどうかはまだ分かりません。しかし取り組みは道半ばであり、保険業界も参加すべきでしょう」とセレントの保険プラクティスのシニア・アナリストであるマイク・フィッツジェラルドは述べています。