次世代の財務サービスの焦点は、個々のサービスの優劣ではなく、法人顧客の業務フロー全体を見渡して理解することにある。
Key research questions
- 売掛金管理の統合化に向けた変化を促している要因は?
- 将来の財務サービスにおいて売掛金管理の統合化が担う役割は?
- 売掛金管理の統合化における銀行のパートナー役を担うサードパーティとは?
Abstract
売掛金管理のデジタル化は、財務サービスが個々のサービスから全体の業務フローへと移行する上で、銀行が避けて通れないプロセスである。
テクノロジーの進化により、売掛金管理のワークフローでは徐々にペーパーレス化が進んでいるほか、例外処理の件数は減少し、ストレート・スルー・プロセッシングの割合が増えている。高度なテクノロジーを活用して、法人顧客の金融サプライチェーンに欠かせない存在となれば、銀行はシェアを拡大し新たな収入源を得ることができるだろう。
売掛金管理のバリューチェーンでは、様々な負担が増え続けている。こうした負担をテクノロジーの進化で軽減できれば、銀行は顧客企業との関係を強化し、顧客ニーズをより深く理解できる(例: 与信情報)ほか、新たな収入源を生み出すことが可能となる。しかし、そのためには売掛金管理サービスとは何かを再考し、ロックボックス・サービスを廃止する必要がある。コダックなどの事例から学べる教訓は、既存の収益源を犠牲にしてでも次世代ビジネスに投資しなければ、他の企業に先を越されるということだ。これは単なる例えではない。フィンテック企業はロックボックス・サービスの収益に頼らず急成長を謳歌している。
本レポートでは、売掛金管理のバリューチェーンの弱点を検証し、業務プロセスのデジタル化によってそれらの弱点を改善しているサードパーティ・プロバイダーを紹介する。彼らが採用しているテクノロジーは、インテリジェント文字認識(ICR)からロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)や最先端の人工知能(AI)まで多岐にわたっている。また本レポートでは、プロバイダーの競争上の強みがいかに進化したのか(物理的な拠点を構えることの重要性や、従来型の規模の経済といった競争力から、データとアナリティクスに基づくスケールメリットへの移行も分析する。そして、銀行がこうした新しいテクノロジーを活用し、差別化を図ることの重要性についても考察する。
本稿と対を成すレポート「 統合売掛金管理ソリューション 2018: ABCDベンダービュー」では、こうしたサードパーティ・プロバイダー13社を個別に評価分析した。本レポートでは、そのうち最も優れたプロバイダーの概要を紹介している。