保険契約管理システムのアップグレードにおけるベンチマーク:経験者からの助言
Abstract
ITのプロフェッショナルならば、システムのアップグレードに苦労した苦い経験があるものでしょう。保険契約管理システム(PAS)の多くは1年から1年半のサイクルで大規模なバージョン変更が行われるため、アップグレードが思ったように進まない機会も多くなります。こうした状況に対応するため、昨今のPASベンダーが常に主張しているのは、多層的なアーキテクチャやその他の技術的設計によってアップグレードに伴うそうした苦難を緩和することです。
これまで、アップグレードの指標となる客観的なデータを収集することは簡単ではありませんでした。では実際に、PASのアップグレードにはどの程度時間がかかるのでしょうか?最新システムは、ベンダーが言うとおり、アップグレードしやすくなっているのでしょうか?ベンダーや外部のシステムインテグレーターに外注した場合と自社内で行った場合とでは実際には何らかの違いがあったのでしょうか?
これらの疑問を解決し、保険会社が抱える主な課題とその対応策を把握するため、セレントは北米の保険会社44社を対象に調査を行いました。
その結果、以下の点が明らかになりました。
- 多くの保険会社はアップグレードの対象を一部に絞ることで、概ね成功している。
- 調査対象の保険会社が行った最新システムへのアップグレードは全て成功しており、これらのプラットフォームが継続的なアップグレードに伴う苦難を和らげる効果があることが裏付けられた。
- アップグレードを行う理由として最も多く挙げられたのは「新機能の追加」であり、2番目は「既存バージョンへのサポートの終了」である。
- 調査対象の保険会社のうち、ベンダーまたは外部の業者の支援を受けずに自社の社員だけでアップグレードを行ったと回答したのは、10.7%にとどまった。アップグレードに際して最もよく利用されるベンダーサービスは、コーディング、コンフィギュレーション、テスティングである。
- アップグレードプロジェクトのうち64.3%は納期内に完了した。
- アップグレードを予算より少なく実現した保険会社もあるが、60.7%は予算どおりのコストをかけている。
「PASのアップグレードを行っていないとする回答も多く、その理由として、自社開発システムであることのほか、システムを導入して間もないことを挙げる例も目立ちました。このことは、新規導入したシステムを初めてアップグレードするにあたり、他の保険会社の経験から得た教訓が非常に参考になり得ることを示しています」と、セレントのリサーチプラクティスのシニアアナリストでレポートを共同執筆したマイク・フィッツジェラルドは述べています。
「多くの保険会社にとって、アップグレードは重大事です。作業は数ヵ月に及び、多くの社員の関与が求められ、取引先をイライラさせることもあります。だが、うまくいけば、アップグレードは順調に進み、機能の追加やコンフィギュレーションツールの更新が可能となるほか、重要なメリットも得られます」とセレント保険グループのディレクターでレポートの共同執筆者であるカーリン・カーナハンはコメントしています。
本レポートは、保険会社によるPASアップグレードの経験に焦点を当て、アップグレードを行う理由、人員戦略、アップグレードの範囲、期間、予算、また、アップグレードに伴う課題、プロセスをスムーズに運ぶための保険会社からの助言も紹介しています。