リスク管理における戦略的イノベーション:コンプライアンス1、イノベーション0
Abstract
世界の金融業界では2015年までにリスクと規制に関する取り組みに500億ドル超を支出すると予想されます。しかし、金融機関は、単に最低基準を満たす必要最小限の措置を講じるのではなく、ビジネスのイノベーションと価値を追求し、テクノロジーの早急な進歩を達成すべく、積極的に取り組む必要があります。
シリーズ最初のレポート「リスク管理における戦略的イノベーション」では、リスク管理におけるイノベーションのダイナミクスを検証するとともに、その推進要因、それによってどんな利点があるのかを探ります。
日々進歩を遂げる高性能コンピューティング(HPC)がインフラのイノベーションを急展開させています。活用の成熟度はさまざまですが、ITベンダーや金融機関には、フロントオフィスでのデリバティブの価格設定やVaRの計算、またカウンターパーティリスク/CVA分析や全社規模のポートフォリオリスク測定など、スピードや集中的な計算を要するリスク処理の分野において、商品化できるレベルに達しているところもあります。
「素の性能」の目覚しい進歩により、リスク分析における処理時間は短縮しましたが、実際のイノベーションはそれで終わりではありません。これは氷山の一角にすぎず、その後、より高いレベルでのイノベーションの循環が開始すると私たちは考えています。
「市場の進展と、先進的な企業の継続的な変革への取り組み例を分析した結果、イノベーションの規模は拡大し、より強いものになると考えます。このイノベーション競争の勝者は、将来、現在とは全く異なる様相を呈する金融業界において、すなわちリスク、規制、資本という点で根本的に異なる環境において、努力への見返りを得ることができるでしょう」と、執筆者であるリサーチディレクター、キュビラス・ディンは述べています。
「そのためには、きわめて流動的なシナリオにおいて、タイムリー、かつ顧客中心主義でリスクを捉える必要があるでしょう。効率的な担保、流動性/資金調達、その中心にある資本管理業務がそれをサポートします。これはイノベーション競争において非常に重要な部分となります」とも述べています。
本レポートでは、6つの分野で起こりつつあるイノベーションのダイナミクス、その基礎となるインフラ、構造的戦略、ITソーシングとデリバリーに関する新たなパラダイム、やがて現れる新たな金融の世界でのイノベーションをサポートし、実現するリスク管理の運営モデルについて解説しています。さまざまなレベルのイノベーションを理解し、計画するための枠組みを提示し、6つのイノベーションに関連する実例を紹介しています。
本レポートは22p、11図と1表で構成されています。