東南アジアにおける金融包摂の推進
2017/03/22
REPORT PREVIOUSLY PUBLISHED BY OLIVER WYMAN
Abstract
東南アジアでは正規の金融サービス利用の促進は難しい状況が続いています。金融サービスとの関与の深さは商品によって異なり、給与の受け取りまたは光熱費の支払いに銀行口座を利用している成人の割合は18%、正規の金融機関から借り入れをしている人の割合は11%にそれぞれとどまっています。
オリバー・ワイマンはアジア開発銀行の依頼を受け、東南アジアの4つの市場(インドネシア、フィリピン、カンボジアおよびミャンマー)でフィナンシャル・インクルージョン(金融包摂)を加速させるためにデジタル金融が果たす役割についてMicroSaveと共同で調査しました。調査では4つの市場、80を超える関係者に取材し、詳細に二次調査と経済分析を実施し、その影響をより明確に把握し、数値化することを目指しました。
その結果、デジタル金融ソリューションの導入で、低所得階層(BoP)およびマイクロ/中小企業(MSME)セグメントの決済サービスおよび融資に関する未対応のニーズのうちそれぞれ40%および20%を解決できることがわかりました。デジタルソリューションが金融包摂に最も大きなプラス効果をもたらすと考えられる分野は次の5つです。
- 本人確認および認証手続きの迅速化、低コスト化と利便性の向上
- 携帯電話とPOSデバイスを使って、サプライサイドの販売およびサービスに関する問題を経済的側面から変革
- 電子決済の普及トレンドを生み出し、サプライサイドのビジネスケースを支援
- 代替データソースによる信用情報へのアクセスを可能にし、顧客プロファイリング、信用リスクの評価、不正行為の検知能力を改善
- 低コストのデジタルオリジネーションとサービスチャネルを通じた少額預金の動員
デジタル金融だけで金融包摂のギャップを全て埋めることはできませんが、デジタル主導による金融包摂の加速がもたらすGDP押し上げ効果はインドネシアやフィリピンで2%、カンボジアでは6%に上るとみられます。国民1日の所得が2ドル未満であるとすると、これによりインドネシアとフィリピンでは所得伸び率が10%、カンボジアでは約50%に達すると考えられます。