中小企業向け保険のオンライン化競争:転換期到来か?
2021/08/01
Abstract
中小企業の経営者が商業保険を購入する際に、オンラインを選択するケースが増えている。こうした人々はより多くの選択肢、よりシンプルな購入プロセス、そしてより安い価格を求めている。
個人向け保険が商品化され、デジタル販売の世界へと移行したように、中小企業向け保険や労災保険のオンライン販売も急速に拡大している。オンライン代理店からMGA(総括代理店)から保険会社に至るまで、保険のオンラインサービスは急激に増加している。現在、さらに多くのサービスが計画段階にあることが分かっているが、これは現在の状況を確認して機会を検証しているだけなのか、それとも実現するのだろうか?いずれにしても、オンライン化したからといって、顧客が集まるわけではない。
そこで、セレントは調査を行って消費者の声を聞くことにした。まず最初に、中小企業経営者に対し、保険の直接購入にどの程度関心があるか尋ねてみた。関心があると回答した場合は何が重要なのか、関心がないと回答した場合はその理由を、保険の代理店は顧客を維持するために何をすべきか、直接販売を行う保険会社が顧客を獲得するためには、どのようなサービスを提供する必要があるのかを尋ねた。
以下は、調査で得た回答である。
- ほとんどの回答者は、保険の適用を受けるためにBOP(事業主保険)を購入しており、価格はもちろん、保険の補償範囲や保険金請求についても重視している。
- 最も一般的な購入チャネルは代理店であり、回答者の66%が専属代理店か独立系代理店のいずれかを利用していた。しかし、オンラインで購入していると回答した人の方が、他の大半の方法を利用している人よりも購入プロセスに対する満足度が高かった。一方、独立系代理店を通して購入している人は、最も満足度が低かった。
- 中小企業経営者の約75%が将来的に保険をオンラインで購入する可能性が高いと回答している。55%は代理店を通して購入するのが望ましいとしているが、オンラインの方が安価であれば、オンラインに切り替えると回答している。代理店を選択する人は、個人的なつながりや助言および提案を求めている。
- 今回の調査でオンラインでの購入を希望していると回答した中小企業経営者の数と、2年前の調査結果を比較すると、関心が大幅に高まっていることがわかる。2年前の調査では、オンラインでの購入を希望していた回答者は38%だったが、今回はほぼ2倍だった。こうした傾向を注視している保険会社 (特に、独立系代理店の販売チャネルに委託している保険会社) は、自社のスタンスをシフトさせる転換点に近づいているのかどうか判断する必要がある。
- 中小企業向け保険のオンライン市場は大きな成長を遂げており、保険会社にとって無視できない存在になっている。その規模は550億ドルと試算され、うち330億ドルは損害保険である。
- この市場に対応するためには、いくつかの選択肢がある。保険会社は、オンライン代理店やMGAとの提携、直接販売、あるいは自社の代理店支援といった方法でオンライン市場に対応することができる。但し、それぞれ異なる機能が必要になる。
- この市場への参入を検討している保険会社は、多くの戦略的な疑問についてじっくり考え、必要なテクノロジーだけでなく、組織内の文化の変化、プロセスの変更、および今後の代理店の役割について考慮すべきである。