新しいタイプの医療ローン
Abstract
医療費の増加に伴い、医療ローンなど医療費関連の銀行サービスに対するニーズが拡大しています。現在の景気状況を考えれば、新たな消費者向けローン の開発は非現実的に思われるかもしれません。しかし、医療費を対象とする消費者向けローンはこれまで未開拓であり、この分野への進出基盤を築きたい金融機 関やベンダーにとっては今が好機といえるでしょう。
最近まで多額の医療費でも健康保険でカバーすることが可能であり、医療ローンに対するニーズはほとんどありませんでした。しかし、医療保険の有効性は急速に失われつつあります。掛け金の高い健康保険が増加した結果、医療費市場のコスト構造が大幅に変化し、従来は雇用者や保険会社が負担していたコストを消費者が負担するようになっています。個人負担額が貯蓄額を上回るペースで拡大する中、医療費の支払いや予想外の出費に伴うキャッシュフローの調整に充てるためのローンを求める動きが広がるでしょう。セレントは、平均的世帯における医療費の個人負担額に対する貯蓄額の不足分が2014年には253ドルに拡大すると予想しています。すなわち、2014年には市場全体で320億ドルの医療ローンが必要になるとみています。
これまでも確かに医療ローンは利用されてきましたが、その大部分は多目的なクレジットカードの形態をとるもので、多くの人にとって与信枠が取得しにくくなっています。医療費に特化したローンもあるとはいえ、一般的な医療を対象とする市場での普及は広がっていません。従って、既存の医療ローンを進化させるか、全く新しいローンを開発することが求められるでしょう。
レポートの主な内容は以下の通りです。
- 平均的世帯の医療費の個人負担額は2009年の1世帯当たり2,515ドルから2014年には31%増の3,301ドルになるとみられる。2014年時点で、これらの費用は平均的世帯の総所得の6.6%を占めると予想される。
- 今後、信用力の低い層をターゲットに投入される医療ローンは、低リスクまたはリスクフリーの商品にする必要がある。商品開発にあたってはリコースローンや給与引き落としなどのモデルが参考となろう。
- 今後、信用力の高い層をターゲットに投入される医療ローンは、医療機関が抱える経過期間の長い債権や不良債権の圧縮とカード利用に伴う割引とをトレードオフすることで価値を創出する必要があるだろう。
出典:セレント
「既存の医療ローンはいずれも欠点を抱えています。まず、医療ローンの対象は概ね高額医療に限られています。また、最も医療ローンを必要としている人がその恩恵を受けられない状況にある一方、比較的信用力の高い消費者は既存の医療ローン商品には魅力を感じていません」とセレント銀行プラクティスのシニアアナリストでレポートを執筆したレッド・ギレンは述べています。「医療に特化したローン商品を成功させるためには、誰もが利用できるものにする必要があります。その結果、与信リスクの高い層はリスクスコアリングとは関係なく与信枠を得ることが可能になります。信用力の高い層に対しては、金融機関が特典や割引といった面で多目的カードを上回る魅力を持つローン商品を提供する必要があります。」
本レポートは、医療ローンに対するニーズの変化の背景にある要因やトレンドを分析しています。また、医療ローンの従来商品や既存商品の概要も示しています。
本レポートは24図と1表を含む45ページで構成されています。