米債券OTCデリバティブ取引におけるEOB:破壊的技術の予感
Let Them Have Order Books
Abstract
米債券店頭デリバティブのEOB(Electric Order Books)は、革新的なビジネス設計であり、いわゆる、破壊的技術となる可能性があります。ただし、既存プレーヤーは自らの市場シェア低下につながる事態に手をこまねいてはいないでしょう。2013年には新規EOBの投入が相次ぐ予定であり、競争が一段と激化する見通しです。
セレントの最新レポート「米債券OTCデリバティブ取引におけるEOB:破壊的技術の予感」は、債券のOTCデリバティブの取引方法に変革をもたらす革新的なビジネスモデルとテクノロジーを取り上げています。特に金利スワップ(IRS)とクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)向けの革新的なEOBに焦点を当てています。
このレポートは、セレントの通常のリサーチレポートをさらにバージョンアップし、「市場破壊」につながる可能性をもつこの革新的なテクノロジーに焦点を置いて執筆したものです。
EOBはそれ自体は目新しいものではありませんが、現在ディーラーが主にマニュアル作業で電話を通じて対顧客取引(D2C)を行っているスワップ市場にこれが導入されれば、同市場に恒久的な変化をもたらすでしょう。EOBを導入することで、スワップ市場は透明性の向上、アクセスの拡大、執行の確実性向上(取引時における)といった強みを持つことになるでしょう。しかし、EOBは高い確実性(アクセス、清算、執行)を備える一方で、(少なくとも現時点では)認知されたブランドは確立されていません。米国のD2C市場において公開されている一部の売買発注システムは(Javelin、trueEX、TeraExchangeなど)、特に金利スワップとクレジット・デフォルト・スワップに関しては、最終的にスワップ執行ファシリティ(SEF)または公認取引所(DCM)に移行する方向で進んでいます。このほかTradeweb、MarketAxessおよびブルームバーグも発注システムに近い機能を担っており、今後はやはりSEFに移行する可能性が高いといえるでしょう。
EOBへのスポンサーも、その革新性ゆえに最終的には破壊的な力を持つようになる可能性があります。ただ、既存プレーヤーからの厳しい攻勢が予想される上、ドッド・フランク法施行後もこうしたスワップ商品の流動性が持続するかどうかは不透明であることから、大きな発想の飛躍がない限り、大規模な破壊を引き起こすには至らないでしょう。
「こうしたシナリオ下で成功する電子プラットフォームとは、EOBを含めて、既存のワークフローを取り込む機能と新しい革新的な機能を備えたものであると考えられます」と、証券グループのリサーチディレクターでレポートの共同執筆者であるデビッド・イーストホープは述べています。
本レポートは19ページ、4図と3表で構成されています。