アジアにおける決済データ収益化の機会
企業が求めるデータ主導型サービスを特定する
Key research questions
- アジアの法人顧客にとって最優先事項となっているのは、どのようなサービスの向上か?
- 銀行業界の収益機会はどこにあるのか?
- 顧客が必要としているサービスを提供しないことにより、どのようなリスクが生じるか?
Abstract
法人顧客が銀行パートナーに求めていることを理解することが、これまでになく重要になっている。ますます複雑化する業務環境に直面している大手企業は、様々な目的で銀行にサポートを求めている。具体的な目的は企業によって異なるが、ほとんどがコスト削減と業務効率向上という2つのテーマに分類できる。
こうした状況は、もちろん今に始まったものではない。以前から法人顧客は銀行パートナーに対し、より豊富で価値のあるサービス提供を常に促してきた。しかし、現在の市場にはこれまでと異なる点がある。それは、市場の競争が激化する中、顧客が提携できるプロバイダーの選択肢が大幅に増えていることである。そのため現在は、多くの顧客が必要なサービスにアクセスするために新たなプロバイダーとの関係を構築するようになっており、銀行にとって大きな懸念材料になっている。
こうした状況を受け、銀行では行動を起こす緊急性が高まっている。今や、問題は投資するかどうかではなく、サービスを強化して新しい収益を生み出し、既存のビジネスを保護するために、どのように現状に適応していくかということである。そこで、銀行業界が取り組むべき課題として浮上しているのが、データの収益化、すなわち、銀行が保有するデータ資産を利用して商業的利益を支援するという考え方である。すでに多くの銀行が決済データを活用し、業務の効率化や対顧客サービスの強化に向けた取り組みを支援しているが、こうしたデータの収益化への関心がここ数カ月で急激に高まっている。
アジアで活動する銀行の今後の方向性を理解するために、セレントはオーストラリア、香港、インド、シンガポールの25の金融機関と32の大手企業顧客を対象に一次調査を実施した。その目的は、企業が直面している課題と、アジアで活動している銀行の具体的な機会を特定することである。本レポートは、欧州および北米の法人顧客のニーズに特化した各調査レポートを含むシリーズの第一弾である。
アジアで活動している銀行に関する主な調査結果は以下の通り。
- アジアの銀行の80%が、データ主導型サービスに対する顧客の需要が増加していると回答
- 76%が、決済データを活用して商品とサービスのイノベーションを支援するためのビジネスケースに取り組んでいると回答
- 企業の78%が、業務の効率化を実現できるパートナーがいれば、バンキング業務の一部または全部の移行を検討すると回答
最も重要な点として、企業が費用を支払ってでも受けたいと考えているサービスについて分析することで、銀行業界に以下のいくつかの収益機会があることが浮き彫りになった。
- アジアの大多数の企業が銀行パートナーに対応を求めている分野は、セキュリティ、リアルタイム予測、およびISO 20022の課題に対するサポート
- 53%の企業が、費用を支払ってでも特に積極的に受けたいと考える3つのサービス強化の1つとして、セキュリティの向上を挙げている
- 仮想アカウントは明らかな衛生要因になっている。現在、このサービスに費用を支払う意欲は低いが、これにアクセスするために新しいパートナーに乗り換えることを検討する可能性があるとしている企業は33%に上る
銀行には何もしないという選択肢はない。収益拡大をもたらす分野はいくつかあるが、既存顧客との関係を維持するために投資することも収益の拡大と同様に急務である。