中国の決済およびサンクションをめぐるコンプライアンス
Abstract
セレントはDow Jones Risk & Complianceの協力を受け、国際決済における中国人民元の重要性が高まっている状況や、中国のChinese Commercial Code(CCC)の使用をめぐる銀行の動きと将来の計画に関する調査を行いました。
最新レポート「中国の決済およびサンクションをめぐるコンプライアンス」は、国際貿易の決済に人民元を使うケースが増えている現状や国際決済の処理および監視に関するテクノロジー上の課題について取り上げています。レポートでは、特に中国との国際決済におけるCCCの使用について注目しています。
中国はここ10年間に急速な経済発展を遂げ、世界第2の経済大国となりました。その主な原動力となっているのは国際貿易です。しかし、国際貿易の決済に中国の人民元が使われるケースはまだ少ないのが現状です。中国は国を挙げて人民元の国際化に取り組んでいます。ここにきてクロスボーダー取引の決済に人民元が使われるケースが増えるなど、その努力は実を結びつつあります。また、中国は世界で最も被仕向け送金の多い国の1つにもなっています。
「中国には、正規の資金流入に加えて、莫大な違法資金も流入しています。そのため、人民元の国際取引はマネーロンダリングのリスクを抱えています。しかしながら、中国の銀行では、マネーロンダリング防止(AML)対策がさほど徹底されていないのが現状です」とセレント証券グループのアナリストでレポートを執筆したアリン・レイは述べています。
中国におけるAML対策を難しくしている要因は数多く考えられます。セレントは、様々な銀行を対象に、国際貿易で中国名を処理する際に生じる独自の問題について調査しました。その結果、以下の点が明らかになりました。
- 中国との国際取引の処理および監視プロセスにおけるテクノロジー上の大きな課題は、中国名および漢字の使用に伴うもので、取引を監視するためにそれらを書き換える際にも問題が生じている。
- Chinese Commercial Code(CCC )には大きなコンプライアンスリスクが伴う。CCCは国際決済に幅広く使用されているが、AML対策でこれを使用しているケースは少ない。CCCの使用を進化させ、複数のプロセスで使用しているのは、一部のグローバル銀行に限られる。
- 多くの銀行は業界全体で新たな標準や枠組みが確立するまで様子見の姿勢をとっており、現時点でこの問題に真剣に取り組む動きはほとんど見られない。今回調査した銀行の半数以上は、CCCに伴う問題を社内でマニュアル処理している。
- 現在、CCCに関する規制は最小限にとどまっている。CCCを存続させるためには、当局が十分な注意を払い、業界標準を策定することが必要である。
本レポートは32p、18図と4表で構成されています。