バンキング・アズ・ア・サービス:第三幕
中小企業が主役に
サービスとしてのバンキング(BaaS)の進化の過程が3幕劇であるとすれば、現在は第3幕の始まりといえよう。これから緊張と課題がピークに達し、やがてそれらは解決に向かうだろう。第1幕は、期待の高まりと熾烈な競争に満ちた目まぐるしい時期だった。第2幕は典型的な転換期となり、BaaSの欠点や課題が明らかになった。ミドルウェアプロバイダーを含む強固で持続可能なBaaSモデルを構築する上で最も重要なデューディリジェンスと継続的なリスク管理が不十分だったため、断層が生じる結果となった。S&P Global Market Intelligenceによると、2023年に「米国の銀行規制当局が発動した厳しい強制執行措置(早期是正措置指令、停止命令、同意審決、正式協定など)のうち、提携先のフィンテック企業にBaaSを提供している銀行を対象とするものが全体の13.5%を占めていた」。さらに、BaaSを手掛ける銀行の数が増えるにつれ(FedFisによると2022年10-12月期の115行から2023年10-12月期には136行に増加)、競争の過熱が続いた。その一方で、多くの市場参加者の収益は思ったほど伸びず、そのうちGoldman Sachs はBaaSを含むトランザクションバンキング事業の全面的な見直しを進めている。
BaaSの第3幕はBaaS向けミドルウェアプロバイダーSynapseの経営破綻で始まり、同社の提携先のEvolve Bankは連邦準備制度理事会(FRB)の強制措置に加えてデータ漏洩による打撃も受けている(同行はStripeとの提携を通じて業績がピークに達していただけに特に落ち込みが激しい)。
BaaS業界では、いま新たな均衡が生まれつつあるようだ。それを実証しているのは新しい主役たち―①Live Oak Bank②Pocketbook/Grasshopper Bank/Treasury Primeのパートナーシップ③StripeとFifth Third傘下のNewline―である(詳細は以下に記す)。この均衡を支えているのは銀行とフィンテックの直接的な連携、徹底的なデューディリジェンス、着実かつ継続的なリスク管理である。