コロナ禍におけるテクノロジー支出:2021年 正常化への道のり
Abstract
パンデミックによる当初の打撃その影響の長期化を受け、金融機関は長期の戦略的なIT支出目標を見直している。2020年に金融業界では、遠隔操作モデル、政府支援をサポートするプラットフォーム、デジタル顧客エンゲージメントを可能にするインフラへの投資に向けて、広範囲で優先順位の見直しが行われた。ほとんどの銀行は、2020年の大半にわたってIT支出を抑制するというパターンを維持し、「様子見」の姿勢をとりながら景気後退に陥った場合に備えて手元現金を積み増した。その結果、投資の一部は維持されたが、多くは延期された。
2021年になっても新型コロナウイルスの感染拡大とパンデミックによる影響は続いているが、金融業界は回復し始めている。セレントは、今年のIT支出に影響を与える主なトレンドをいくつか挙げている。
多くの市場では、銀行は今回の景気低迷を予想以上にうまく乗り切り、経済活動は回復しつつあり、投資再開の機会に多額の手元資金を投入している。北米とEU諸国では収益の増加傾向が続いているが、中南米とアジア太平洋地域ではコスト圧力が一部残っている。
ベンダーは、新しい取り組みに向けた健全なパイプラインを経験しており、2020年を通して続いた選定プロセスの多くが活動に移され、2021年に入ってから累積需要が急激に顕在化していると指摘している。
- 銀行はデジタル顧客エクスペリエンスへの投資を再開し、パンデミックの間に顕在化したデジタルデリバリーにおけるいくつかのギャップを解消している。セレントの調査によると、多くの場合、デジタルトランスフォーメーションとクラウド移行のスケジュールは2年ほど早まっている。
セレントは、毎年初めに、世界各国の銀行によるIT支出の変化と成長率を多角的に調査した年次IT支出報告書を発表している。新型コロナウイルスによる影響とデータの全般的な有効性および信頼性を考慮した結果、本レポートでは従来のIT支出分析とは異なるアプローチを採用し、予測よりもシナリオの立案に注目している。
2020年にパンデミックが発生した当初、その影響に対して準備ができていた銀行はほとんどなく、今年に入っても影響が残ると予想し備えていた銀行はさらに少数にとどまっていた。我々は依然として正常な状態に戻るための「長期戦」の最中にあり、IT支出についてはある程度明確になりつつあるが、銀行業界にはまだ多くの不確定要素が存在する。セレントは、過去のレポートシリーズも続けていく方針であり、2021年後半から2022年前半にかけて従来の支出予測を再開したいと考えている。