ベビーブーマー世代の定年退職がもたらすインパクトを分析
Abstract
米国内の定年退職者および定年退職を間近に控えた人の数は2020年までに計3,000万人増加すると予測されています。彼らが米国の総人口に占める割合は、2002年の44%から2020年には約50%に拡大する見通しです。
1946年から64年にかけてのベビーブーム期に生まれた世代は、今後数年間のうちに相次いで定年退職を迎えます。この世代の人口は計7,600万人に達し、米国総人口の28%以上を占めています。その人数の多さに加え、この世代に富裕層が多いことを踏まえると、彼らの定年退職が先進国の金融市場与える影響は極めて大きいと考えられます。セレントは最新レポートの中で、ベビーブーマー世代の実情と彼らの定年退職が金融サービス業界にもたらすインパクトについて多様な側面から分析しています。
米国では、65歳以上の世代層における貧困率が極めて下がってきた一方、50歳以上の年齢層が保有する金融資産は全米の貯蓄貸付組合の総貯蓄額の5分の4、株式投資額の3分の2を占めています。それでも、なおこの世代の多くの人が将来の生活に対して不安を感じています。預金金利が史上最低に近い水準まで落ち込んでいる中、全勤労者の半数近くは従業員年金制度に加入しているものの、今や確定給付型は例外的になりつつあります。したがって、多くの勤労者にとって、定年退職の時期を遅らせるか、よほど思い切って貯蓄および投資行動を変えない限り、定年後もそれ以前の生活水準を維持することは難しいといえるでしょう。セレントの証券取引・投資グループのリサーチ・アソシエイトで本レポートの著者であるアダム・ジョゼフソンは、「総額数十億ドルにのぼる米国内の年金プランはそのままロール・オーバーされていますが、勤労者たちはここにきて重要な決断の時を迎えているのです。」と述べています。
金融サービス企業はこのような状況を絶好のビジネス機会とみていますが、退職後の資金計画を考えている人々に対して提供するサービスや金融商品に関して、大幅な見直しを行なった金融機関はまだわずかにすぎません。これまでも定年退職を間近に控えた世代向けとして、終身保険や定期保険の新商品が次々と発売されていますが、これらの基本的な金融商品ではもはや退職者のニーズに対応しきれなくなっています。金融サービス会社側には、定年退職後の資金計画に総合的なアドバイスを提供できる技能と専門知識を備えた営業スタッフをそろえるなど、より有効な対応が求められています。それができなければ、顧客に必要以上のリスクを負わせることになるばかりか、自らの首を締める結果にもなりかねないでしょう。
本レポートでは、アメリカン・センチュリー、コロニアル・バンク、ワコビアの事業戦略を紹介しています。レポートの目次はオンラインでご覧になれます。