ポストトレード処理業界の将来:パートⅡ:市場寡占化
Abstract
ポストトレード処理業界の将来は、様々な要因の今後の進展状況によって左右されます。特に重要なのは、米国および欧州の経済状況であると考えられます。
セレントの最新レポート「ポストトレード処理業界の将来:パートⅡ:市場寡占化」は様々な要因が同業界に及ぼす影響を分析し、それらが今後5年間の決済処理件数の伸びにいかに寄与するか、市場参加者の寡占化にどのような影響を与えるかを予測しています。ポストトレード処理業界は、下降トレンドによる煽りを受けています。景気および取引環境の不透明感を背景に、米国と欧州では2008年以降決済処理件数の変動が激しく、一貫した減少傾向が続いています。2012年の決済処理件数は2008年に比べて米国では5%、欧州では7%少なくなっています。一方、アジアの4つの先進市場では逆に件数は増加傾向にあります。
決済処理件数の動向を左右する主な要因は、米国と欧州の経済状況といえるでしょう。ただし、このほかにも多くの要因が業界に変化をもたらすとみられます。最も大きな影響を受けるのは欧州かもしれません。ユーロ圏では、長引く経済危機によって取引環境の不透明感が高まるとみられます。一方、米国では緩やかながら着実に景気回復が進んでおり、市場参加者の決済処理件数はいずれも増加する見通しです。欧米の景気状況が改善すれば、アジアの資本市場の長期的な発展と併せて、決済処理件数の拡大が見込まれます。
「ポストトレード処理業界では市場参加者の寡占化が進み、処理手続きは規模型事業としての様相を強めています。この傾向は、特に欧州の市場インフラおよびカストディサービスプロバイダーの間で顕著となるでしょう」と、セレント証券グループのアナリストでレポートを共同執筆したアリン・レイは述べています。
「我々が決済処理件数の増加を促す様々な要因を分析したところ、今後は取引所からトローカルなサブカストディアンに至る取引のバリューチェーン全体で大規模な再編が予想され、その影響はブローカーディーラーにも及ぶとみられます。こうした動きを受け、中小プレーヤーは生き残り戦略の策定を迫られる一方、大手プレーヤーはスケールメリットの強みが増す分野でシェア拡大の機会を探る必要があるでしょう」と、シニアアナリストでレポートの共同執筆者であるジョセフィン・ドゥ・シャズルネはコメントしています。
本レポートは、ポストトレード処理業界の変化を促す要因に焦点を当てた前回のレポートに続くものです。レポートではまず地域別にこうした要因を分析した上で、これらが市場インフラプロバイダー、カストディサービスプロバイダー、投資運用会社、ブローカーディーラーといった市場参加者の寡占化に及ぼす影響を予測しています。さらに、こうした要因が決済処理件数に及ぼす影響を①強気②基本③弱気―の3つのシナリオに基づいて想定し、業界全体の決済処理件数の動向を推定しています。最後に、この業界に進出しているプレーヤーが、事業環境が変化する中でも競争力を維持するためには何をすべきかを提言しています。