新たな経済環境における金融機関の資金調達動向
Abstract
最近の金融環境は、金融機関の伝統的な資金調達のメカニズムに変化をもたらしています。こうした動きの主な背景には利益の縮小、融資環境の悪化、資産クラスと返済期限の関係の変化などがあり、借り手が長年にわたって享受してきた選択肢の柔軟性や多様性が失われつつあります。
金融機関にとって資金調達の制約は重要な問題となっています。資産価値の増大を目指す金融機関に加え、支払不能の回避や目先の借り換えニーズに対応するための緊急な資金調達を迫られている金融機関からの需要も拡大しています。市場では資金調達コストの安さが競争上の優位として注目されつつあり、小口預金を手がける銀行の間で競争が激化しています。
セレントの最新レポート「新たな経済環境における金融機関の資金調達動向」は金融機関の資金調達をめぐる最新動向を明らかにし、特に銀行をはじめとする金融機関の資金調達と流動性の問題をより深く理解するための構造的な枠組みを示しています。
「金融機関にとっては、信頼できる安定した資金源の確保が今後も重要な課題となるでしょう。現状では、詳細で一貫性のある資本管理の枠組みを維持する余裕のある金融機関はほとんど見当たりません。新たな資金調達環境に対応するためには、企業や法的枠組みの大幅な変更が必要となるでしょう」とセレント証券プラクティスのアナリストでレポートの共同執筆者であるイスマイル・コラク は述べています。
目先は融資枠がさらに厳格化され、借り手の交渉力が一段と弱まることが予想されるほか、金融機関は代替的な資金調達源の模索を余儀なくされる可能性が高いとみられます。今後は短期の大口融資に対する信頼性がさらに薄れ、代わりに返済期限の長い融資の利用が広がるでしょう。伝統的な資金源であり、基本的に調達コストの安い預金が(追加コストも見込まれるものの)激しい競争の場として再浮上すると思われます。
現在のような信用収縮の再発を防ぐためには、資金調達先の多様化や活力のある資金調達メカニズムの確立が不可欠です。近い将来には、資本管理に特化した専門家チームの増加、より高度なリスクおよび流動性管理ツールの開発、資金調達の最終決定に対する経営陣の関与の拡大といった動きがみられるでしょう。
本レポートは23図と4表を含む全52ページで構成されています。