ケーススタディ:日興コーディアル証券のリテール戦略
Abstract
(このレポートは"Case Study: Nikko Cordial Securities' Retail Strategy"というタイトルで英文で発表されました。)
日本の株式市場が長い低迷をようやく抜け出し回復基調にある中、国内証券会社にとっては、個人金融資産の獲得シェアを拡大する絶好のチャンスがようやく到来したと見て良いでしょう。しかし同時に、改めて市場からの信頼を得る必要があるのです。
セレントの最新レポート「ケーススタディ:日興コーディアル証券のリテール戦略」は、国内三大証券の一角を占める同社の取り組みに注目し、国内初となるセパレートリー・マネージド・アカウント(SMA)サービスの導入をはじめとする積極的なリテール戦略を詳しく紹介しています。
国 内株式市場ではここ2年ほどの間に個人投資家の取引が飛躍的に拡大しました。とはいえ、全世帯の保有金融資産の半分以上を占める預金残高に比べると、個人 の保有証券残高は依然低い水準にあります。証券各社は、こうした個人金融資産におけるシェア拡大を狙って様々な新商品やサービスの投入を試みています。中 でも、フィーベースのウェルスマネジメントサービスは、顧客に長期的で安定した投資選択肢を提供すると同時に、証券会社自身の収益基盤の安定的な確保をも 実現する戦略として展開されています。
日興コーディアル証券は、国内三大証券の中でも最もダイナミックな側面を持っているといえるでしょう。とりわけ1999年に法人部門を分割してシティグ ループと統合した後は、幅広い顧客層の中から収益性の高いリテール顧客を獲得・維持することを目標に次々と積極的な戦略を展開してきました。今回のケース スタディは、国内リテール証券市場に生まれた2つの新たなビジネス機会を巡る日興コーディアルの取り組みに焦点を当てています。1つは、規制緩和により 2004年4月から証券会社以外の事業法人や独立金融アドバイザーが、また12月からは銀行が証券仲介業者として株式等の投資商品の販売を認められるよう になったことです。日興コーディアル証券は、こうした新たな販売チャネルの開拓を意欲的に進めており、実際に同社を通じて証券仲介業に登録した件数は、登 録件数全体の約9割を占めています(2004年9月末現在)。
2つめには、証券、銀行および保険会社が個人金融資産の獲得に凌ぎを削り、信頼ある投資アドバイザーとしての地位確立を目指す中で、欧米金融業界では数年 前から重要な課題のひとつとなっているウェルスマネジメントサービスが、日本でも大きな注目を集めるようになったことが挙げられます。日興コーディアル証 券のウェルスマネジメント戦略の中核を成す一つはSMAサービスで、2004年4月に同社が国内初となるSMA商品を投入すると、競合する数社がこれに追 随して同様のサービスを開始しています。日興コーディアルのSMAサービスは、米ITベンダーであるフォリオ社の先進的なポートフォリオ管理システムを採 用しています。
「日興コーディアル証券は積極的に組織の再編を推進する一方で、新商品やマーケティング戦略の開発では常に独創性を発揮しています。国内株式市場の昨今の 回復トレンドに加え、金融における規制緩和が進み、資本市場への個人投資家の参加を促すための新商品・新サービスの開発も盛んであることを踏まえると、日 興コーディアルによる新商品SMAの投入は絶好のタイミングだったといえるでしょう」と、セレントのシニアアナリストでこのレポートの執筆者であるニール・カタコフは述べています。
本レポートは11の図と5つの表を含む全27ページで構成されています。