米国におけるOTCデリバティブの清算集中の影響:バイサイドの試練
Abstract
ドッド・フランク法の施行によるOTCデリバティブ市場全体の改革は、取引の決済環境を大きく変えています。決済システムの透明性と説明責任への規制が強化されていますが、取引当事者間の清算から清算集中への移行に伴い、バイサイドを中心とする市場参加者は多大なリソースの確保を迫られています。
セレントの最新レポート「米国におけるOTCデリバティブの清算集中の影響:バイサイドの試練」は、ドッド・フランク法の施行が米国のOTCデリバティブ市場に及ぼす影響を分析しています。清算集中への移行は、セルサイドよりもバイサイドの市場参加者に大きな影響を及ぼすでしょう。今回の変更により、取引プラットフォームや接続環境の全面的な見直しが必要になっています。市場の変動や景気減速を背景に市場参加者はインフラ改善を行う余裕を失いつつあり、中小プレーヤーの多くはOTCデリバティブの取引要件をクリアすることさえ難しい状況に陥りかねません。
大口のOTCデリバティブ取引の決済に備え、中央清算機関(CCP)や接続を再構築する決済ブローカーは大規模な投資を行うとみられます。取引プラットフォームやカストディアンも多額の支出を余儀なくされるでしょう。一方、注文執行ブローカーは既に必要な接続の大半を構築済みです。注目すべきは、バイサイドは注文執行・決済ブローカーやCCPとの接続構築コストも負担しなければならない点です。ただし、全てのスワップ取引の清算機能を統括する中央清算機関が設立され、各ブローカーもバイサイド全体との接続を確保する取り組みを進めることで、バイサイドのコスト負担はある程度軽減されるとみられます。
「ドッド・フランク法は、店頭デリバティブ市場を一変させるでしょう。バイサイドの金融機関は主要な市場参加者として、新規制の下で業務を行うために必要なインフラの開発・整備を進めることが不可欠です」と、シニアアナリストでレポートを執筆したアンシュマン・ジャスワルは述べています。
レポートは、市場の変化をバイサイドの観点から見つめています。最初に店頭デリバティブ市場で予想される動きや、これまで主流だった当事者間モデルからCCPモデルへの移行がもたらす大きな変化について分析しています。次に、担保管理、マージン、報告義務などへのインパクトといった様々な変化がバイサイドに与える影響を考察しています。また、新規制によって生じるとみられる問題や課題にも触れています。最後に、清算集中の実施が財務面に及ぼす影響や今後予想される動きについて論じています。