バイサイドオペレーションのアルファ創出: フロント・ツー・バックオフィスのテクノロジー、データ、ESG、アウトソーシングの新しい波に乗る
投資会社は、勝者総取りのゲームで生き残るために、適切な運用戦略、ツールボックスおよび戦術を採用して投資を拡大していかなければならない。
Abstract
運用資産(AUM)は大幅に増加しているものの、長期的な逆風要因に見舞われ、バイサイド業界全体の経済状況が変化する中、アクティブ運用を拡大し続けるのは依然として困難である。利益率への持続的な圧力、不確実なビジネス環境、および収益の鈍化が重なり、投資会社はオペレーション面で市場に進出する方法を再考あるいは再構築している。トランスフォーメーションを探求する上で、依然として「フロントオフィスの有効性」と「バックオフィスの効率性」という2つの課題が指摘されている。こうした課題は今に始まったものではないが、新しい変化の波の中で鮮明になりつつある。
本レポートでは、オペレーションの経済性と効率性の向上を追求するために、投資運用マネジャーがどの分野で、どのように新しい戦術を構築しているのかについて検証する。典型的な投資会社の場合、根底にある課題の中で比較的大きな要素となっているのは人材関連の費用である。平均すると、業界ではコスト構造の60%以上を人件費が占めているが、大手企業では40%台と低水準にとどまっている。したがって、ミドルオフィスとバックオフィスの効率性を高めることが成功の重要な柱になる。デジタル、クラウド、人工知能をめぐるテクノロジーの進歩により、自動化、アウトソーシング、システムの合理化といった改善を促進する従来の手段にも「新たな命」が吹き込まれ、漸進的イノベーションという新しい波を支える態勢が整っている。
フロントオフィス機能の有効性を高めることは、依然としてアセットマネージャーの独自性と顧客への提案において中核的な意味を持っている。投資会社は、アルファ(超過収益)を創出するという戦略的意図の下、データからのインサイトの収集、マイニングおよび創出を容易に可能にし、中核的なポートフォリオ機能(調査、資産配分、ポートフォリオ構築、最適化)を利用可能にするために、テクノロジー・インフラへの投資と合理化を進めている。
2020年代半ばまでには、デジタルアプローチとデータサイエンス技術がクリティカルマス(一気に普及する分岐点)に達すると予想され、これにより、投資マネジャーは、相互作用(ワークフローの改善と情報の調和)といった企業へのインパクトを生み出し、投資最適化を中心としたよりアジャイルなアプローチを促進し、よりタイムリーで正確な予測モデルの構築と予想ができるようになる。
スマートアナリティクスにより、リアルタイムのファイナンシャルプランニング、パーソナライズされたレポート作成および強化された財務分析を通じて、より正確な顧客ターゲティング、助言の質の向上、資産配分およびポートフォリオの構築が可能になる。また、新しいテクノロジーが採用されることで、次世代の「デジタルネイティブ」の投資家は、アクティブ運用のアセットマネージャーに「(投資を)一任」するという伝統的な関係ではなく、オートメーション化された、またはマシンベースの投資を利用して投資会社と関わっていくというダイナミクスの変化が生じている。
新しいシフトとビジネスモデルの再構成に関する展望と機会を見据え、投資会社、テクノロジーベンダーおよびソリューションプロバイダーは、数年後に勝利を収めるために準備し、態勢を整えておく必要がある。