日本の金融業界におけるイノベーション:リテールペイメント市場における動向【日本語】
2015/03/03
Abstract
このレポートには英文版 "Innovation in the Japanese Financial Services Industry: Retail Payments" (2015年5月3日発行)もあります。
日本の金融業界におけるイノベーションを、特に、リテールペイメント市場における動向に着目し考察しました。
主要な動向として以下の8点が挙げられます。
- 日本は長らく現金決済主体の市場であった。
- クレジットカードは銀行のみならず、様々な企業が提供する最も普及した非現金支払い方法である。
- ブランドデビット(プリペイド)カードの成長は予想されるが、デビットカードは普及していない。
- 日本は多くの電子マネースキームを持つユニークな市場である。その多くはプラスチックカードや携帯電話の非接触ICチップ上で機能する。
- 2010年の「資金決済法」は、サーバーベースのプリペイド商品サービスに関する規制を拡大し、新たな決済、送金サービス市場を開いた。
- 日本の電子商取引市場は急速に成長し、ますますモバイルチャンネルにシフトしている。
- オムニチャネルへの取り組みも加速している。銀行のオンライン、モバイル、ATM、支店など各チャネルは融合した双方向のチャネルに変貌しつつある。
- 流通業界、通信業界の取り組みに多くの示唆が見出せる。多様な店舗フォーマットを有機的に活用した連携、路面店の付加価値を増加させるオンラインサービス、顧客IDの融合とプレミアサービスなど、金融業界での活用が期待される。
本レポートでは、アベノミクスによる「日本再興戦略」の渦中にある日本の金融サービス業界、特にリテールペイメント市場において、イノベーションに向けて現在どのような取り組みが行われているか、調査結果に基づき考察しています。
「イ ノベーションとは、見えない大陸の探索であり、未消費な消費者に新たな価値を提供することと考えます。今回の分析を通じて、市場と規制、政府の取り組みに おいて、イノベーションの環境は整いつつあると感じました」と、アジア金融サービスグループのシニアアナリストでレポートを執筆した柳川 英一郎は 述べています。また「その上で、最も必要なのは、見えない大陸に乗り出していくためのテクノロジーとモチベーションでしょう」とコメントしています。本レ ポートではイノベーションを意図的に起こし継続するためのイノベーションモデルや、デジタルバンキングのサービスモデルについても提言しています。
本レポートは、34p、29図、2表で構成されています。