サプライチェーン・ファイナンス拡大の年となるか
Abstract
(このレポートは2011年8月15日に"Supply Chain Financing:Flavour of the year? "というタイトルで英文で発表されましたが、和訳版を2012年4月17日に発行しました。)
サプライチェーン・ファイナンスは、オープンアカウント取引の収益化において次第にその存在感を増しつつあり、顧客のサプライチェーン全体をカバーするファイナンスソリューションとして、透明性の向上、取引の管理が強化されています。
オープンアカウント取引の恒常的な増加は、トレードファイナンスを手がける銀行にとって大きな問題となっています。こうした取引の増加は銀行から収益を奪うだけでなく、顧客の取引活動管理の可視性も低下させています。セレントの最新レポート「サプライチェーン・ファイナンス拡大の年となるか」は、国際取引のパターンやトレードファイナンス業務の進化について取り上げ、サプライチェーン・ファイナンス(SCF)の様々なアプローチと金融機関の果たすべき役割に焦点を当てています。また、ビジネス機会、収入源、テクノロジーの進化についても解説しています。
アジア地域ではSCFサービスの拡大が顕著で、特に途上国間取引での導入が広がっています。アジアでは域内取引が増えており、この地域におけるSCFサービスの拡大は加速し、今後3年間の伸び率は18%に達すると予測します。世界の先進工業国のサプライヤーである中小企業の間ではバイヤー主導のSCFサービスに対するニーズが拡大するのに対し、その他の分野ではサプライヤー主導のSCFサービスが拡大するでしょう。
「SCFを軌道に乗せるためにはモデルの構築が重要です。銀行は、ターゲット市場、ファイナンス対象となる業界の種類、導入するSCFサービスを分析・評価した上でSCFプラットフォームの開発戦略を慎重に策定すべきでしょう。この点、地方銀行は地域市場についての豊富な知識を生かし、サプライヤー向けファイナンスサービス(売掛金)において有利な立場にあります」と、セレントのシニアバイスプレジデントでレポートの共同執筆者であるアクセル・ピエロンは述べています。
「輸出取引の拡大に伴い、サプライヤーの間では早期に資金調達を行って受注増を維持しようとする動きが広がっています。売掛金割引やSCFは輸出業者の運転資金ニーズに対応する上では有効ですが、生産・販売サイクルの長期化に伴い、より早い段階からトレードファイナンスを行う必要性がさらに高まっています」と、アナリストでレポート共同執筆者のプラシマ・ラジャンは述べています。