ソーシャル・トレーディング【全訳版】
Abstract
(このレポートは2014年4月2日に"Social Trading" というタイトルで英文で発表されましたが、全訳版を2014年9月9日に発行しました。)
欧州および米国の個人投資家市場におけるソーシャル・トレーディングに焦点を当てます。ソーシャル・トレーディングとは、ユーザー同士が金融市場に関する知識を共有し、互いの取引手法を共有したりまたは真似たりすることを言います。
インターネット、ソーシャル・メディア、スマートフォンの普及などにより、個人投資家のバンキングやトレーディング活動は進化しています。そのため、オンライン取引プラットフォーム、モバイル・アプリ、およびソーシャル・メディアにおける自社のプレゼンスを絶えず強化し発展させることは、各社の戦略計画の重要な課題となっています。ソーシャルテクノロジーは生活の一部となり、比較的若く、テクノロジーに親しんだ世代が、ウェルスマネジメント企業の戦略の再編を促しています。
金融危機後、世代を問わず、個人投資家の姿勢は変化し、それを反映してソーシャル・トレーディングは拡大してきました。ソーシャル・トレーディング・サイトは、従来のオンライン取引プラットフォームの地位を奪い、リテールオンライン取引市場に革命的な変化をもたらしています。ソーシャル・トレーディングにより、世界中のローカルなマーケット情報をリアルタイムで共有できるため、情報の民主化が進んでいます。一方、運用経験の乏しいトレーダーによるデューディリジェンスの欠如、曖昧な規制、群集心理など、課題も多くあります。
「ソーシャル・トレーディング・サイトは従来のビジネス・モデルを打ち砕き、リテールオンライン取引市場に革命的な変化をもたらしています。ソーシャル・トレーディングは、情報のアービトラージが存在しない、魅力的で透明性の高いオンライン取引手法です。従来型の銀行や証券会社は、ソーシャル・トレーディング空間のニッチ企業に、市場シェアを奪われつつあります。取り戻すためには、ソーシャル・トレーディング・プラットフォームを買収するか、自社内でそれを構築するかしかありません」とセレントの証券&投資グループのアナリストで本レポートの共著者であるアシュリー・グローブマンは述べています。
「初心者トレーダーは、より経験豊富なトレーダーの経験から学ぶところが大きく、また、ソーシャル・トレーディングは、企業にとっては若い投資家層との接点を得る良い機会となりうるのですが、トレーダーとの信頼の構築や規制機関の基準の遵守など、ネットワーク構築に伴う課題を考慮する必要もあります」とリサーチ・ディレクターで本レポートの共著者であるイザベラ・フォンセカは付け加えています。
レポートでは、ソーシャル・トレーディング/ネットワークの定義、ドライバー要因、ビジネスモデル、プラットフォームの特徴 、加えてソーシャル・トレーディングに関する規制について解説し、最後にソーシャル・トレーディングの今後の展望を示します。