欧州のABS市場とレポ市場:危機以降の経緯に差
2012/07/25
ジョセフィン・ドゥ・シャズルネ
Abstract
欧州のアセット・バック証券(ABS)市場とレポ市場は、2007~08年の金融危機以降、全く異なる発展の経緯をたどってきました。欧州で2008年に発行されたABSの残高は7,000億ユーロ(約69兆円)を超えていましたが、2012年第1四半期は600億ユーロ(約5.9兆円)にも満たない水準まで落ち込んでおり、業界はなんとかして暗いトンネルの先に光をみつけようとしています。一方、レポ取引の残高は2007年6月に6兆7,750億ユーロ(約669兆円)のピークを記録した後、2008年12月に5兆ユーロ(約494兆円)で底入れし、2011年12月には6兆2,000億ユーロ(約612兆円)を大幅に超えるなど、再び活況を呈しています。
セレントの最新レポート「欧州のABS市場およびレポ市場:危機以降の経緯に差」は、2007年以降にABSおよびレポ市場がたどってきた経緯の違いを分析し、前者が衰退傾向にある一方で後者が復活を遂げつつある理由を探っています。レポートは市場の構造、欧州当局が導入を迫られている諸規制、今後の展開の見通しについて説明しています。
「今後起こる可能性のある市場構造の変化とは別に、解決すべき最大の課題はマクロ経済に関するものです。欧州の規制当局は銀行の安全性を過度に重視するあまり、欧州経済の回復を二の次にする傾向があるように思われます。しかし、この問題をおろそかにすべきではありません。経済を再生する上で、証券化は重要な役割を果たす可能性があります」と、セレント証券グループのシニアアナリストでレポートを執筆したジョセフィン・ドゥ・シャズルネは述べています。
注)ドルから日本円への換算レートは、2012年6月30日の仲値(三菱東京UFJ銀行公表による)を参照。