規制強化がバイサイドの中規模金融機関に及ぼす影響:前途多難【全訳版】
Abstract
(このレポートは2015年3月10日に" Impact of Regulation on the Buy Side: Uphill Task for Smaller Firms" というタイトルで英文で発表されましたが、全訳版を2015年9月1日に発行しました。)
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金融市場は現在、移行期にあります。きっかけとなったのは世界的な金融危機とその余波であり、その結果を受けて規制当局が危機の再発防止のために始めた取り組みがこれを後押ししています。こうした状況下で、バイサイドの金融機関は組織再編や業務の合理化を通じて規制基準に準拠することを強く求められています。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | 規制強化はバイサイドの中小金融機関にどのような影響をもたらしているか? |
2 |
ティア2および3の金融機関が直面している課題は? |
3 | 課題にはどう対処すればいいのか? |
本レポートは、特に中小規模のバイサイドの金融機関にとって規制基準の強化がどのような影響を及ぼしているのかを明らかにしています。ドッド・フランク法(DFA)、バーゼルⅢ、欧州市場インフレ規制(EMIR)、第2次金融商品市場指令(MiFID II)、第2次市場濫用指令(MAD II)といった一連の規制は、取引およびリスク管理システムを拡充し、管理・監視の強化、透明性の向上、アカウンタビリティの向上を重視して定められています。
中央清算が義務づけられている市場の方が流動性ははるかに高く、相対取引は一段とコストが膨んで執行しにくくなっていることから、バイサイドの金融機関が競争力を維持するためには清算戦略を見直す必要があります。同様に、デリバティブの取引所取引と店頭取引のいずれに関しても、フロントオフィスに対する規制を強化する動きが相次いでおり、それらに準拠するための作業およびコストの増加を余儀なくされる状況にあります。そのため、バイサイドの金融機関にとっては取引前処理のコンプライアンスが重要な懸念要因となっています。
バイサイドの中小金融機関は、ある意味で、昨今の厳しい規制強化の矢面にさらされていると感じています。コンプライアンス要件の厳格化に対応できる体制が整っていないからです。大手の資産運用会社やヘッジファンドはセルサイドの競合相手と対等に伍していけるのに対し、中小の資産運用会社はそのために必要な手段を備えていません。それでも、中小のバイサイドの多くは、規制強化とそれに伴うコストを最大限に利用しています。具体的には、リスク管理/データ分析/報告および担保管理といった多様な要件に対応する機能の自社開発に多額の費用を投じる代わりに、自社の得意なニッチ分野を生み出し、独自のノウハウを持つ分野に特化しています。
「バイサイドは相次ぐ新規制への対応を迫られていますが、監視強化の動きに歯止めがかかり、それに伴う変化やコストも抑制に向かうことを示す兆しが見られます。ただし、バイサイドの中小金融機関は引き続きシステムおよびプロセスの自動化と合理化を推し進める必要があるでしょう」とセレント証券グループのシニアアナリストでレポートを執筆したアンシュマン・ジャスワルは述べています。