小切手の電子化: 再びたどるローマへの道
Abstract
小切手のイメージ交換/共有は2006年に爆発的に普及し、2007年もその勢いはさらに加速すると思われます。セレントの予測では、電子的に提示される小切手の割合は2007年末には全体の45%に達する見通しです。また、ACH(自動決済機関)を通じて決済される小切手の割合は、同期間に7%から2007年末には12%に増えるとみられます。
ローマは一日にして成らず、という諺のように、小切手のイメージ交換/共有も簡単には実現しません。それでいながら、イメージ交換は歴史上他に類を見ない速さで進歩を遂げてきたことがわかります。イメージ交換により決済された小切手の件数は、この1年間で3倍近く増加しています(日次平均ベース)。今、業界は分岐点に差し掛かっており、この先どの方向に進むべきか明確な方針も出ていません。セレントの最新レポート「小切手の電子化:再びたどるローマへの道」はイメージ交換に関する前回のレポートをアップデートしたもので、普及を阻む要因や小切手交換の動向を分析するほか、小切手の電子化プロジェクトに対する見解を示しています。
業界は小切手決済の電子化を希望するという点では一致していますが、導入のタイミングとアプローチを巡っては意見が二分しています。オンラインサービスを積極的に提供している大手銀行の多くはイメージ交換システムの導入に多額の投資を行っており、電子化されたイメージを受け付ける銀行がなかなか増えないことに苛立ちを感じています。また、イメージ交換を比較的容易に導入できる小規模の金融機関の多くも、ソリューションプロバイダーが提供している機能を豊富に揃えて待機しています。一方、中規模の金融機関の多くは、より高いROIがもたらされるようになる「転換点」を迎えるまでは投資を控える構えです。このように金融機関の間では、準備体制と採用状況が二分しているというのが現状です。短期的な経済動向に加え、紙ベースによる小切手処理が根強く残っていること、現物決済を前提とする商品が引き続き多いことなどを背景に、大手銀行のほとんどはイメージを使った決済に対応可能であるにもかかわらず、現物の小切手による決済を続けています。この結果、チェック・トランケーション法(Check 21 Act)の実施が進まない状況に陥っています。
長期的には、多くの銀行はゴール直前の「最後の1マイル」が長引くことを懸念しています。まとまった数の金融機関が採用を見合わせることで、それらの金融機関とは引き続き紙ベースの処理を行う必要が生じ、処理単価が跳ね上がることを恐れているのです。こうした問題は過去にも例があり、目新しいものではありません。例えば、1980年代にクレジットカード業界が売上伝票処理を紙ベースから電子ベースに移行した際と初期のACHシステム導入時期にも同じ問題が持ち上がりました。いずれの場合も、採用が本格化してから末端の装置までもが電子化されるまでにかなりの時間を要しました。また、いずれの場合も、単純な経済的インセンティブが全てのエンドポイントへの普及を加速させました。どちらも、業界の課題解決のためには新しいネットワークインフラが必要であることに気づかなかったのです。
しかし、今のところイメージ交換の普及が危機に瀕していることを示す兆候はなく、ローマへの道は安泰です。危機につながる可能性があるとすれば、それは非現実的な期待感といえるでしょう。
「イメージ交換の件数は、明らかに期待値を下回っています」と、本レポートの執筆者でシニアアナリストのボブ・ミーラは述べています。「しかし、現時点の制限要因は普及の危機につながるものではありません。むしろ、新しいインフラの構築中に既存インフラが解体されており、相反する状況がそれぞれ進行する複雑な移行期にある、というのが正しい解釈でしょう。」
本レポートは、小切手イメージの交換および小切手変換を巡る現状を調査し、小切手の電子化プロジェクトの概要とそれに対する見解を示しています。
本レポートは21図と6表を含む全44ページで構成されています。