マーシュの撤退で中小企業向け損害保険市場の細分化が加速へ
Abstract
米国の大手保険ブローカーマーシュ社は先ごろ、中小企業向け損害保険市場からの撤退を発表しましたが、同様のアクションを取る可能性のあるエーオン社とウィリス社がこれに追随すれば、総額7億2,000万ドル(約770億円)に上る商業保険の保険料が市場に流出することになるでしょう。
マーシュ社は3月に行なわれた投資家とのコンファレンス・コールで、成功報酬なしではもはや採算の取れなくなった数千件の中小企業向け損害保険契約について、移管または全面的な解約を計画していることを明らかにしました。セレントの最新レポート「マーシュの撤退で中小企業向け損害保険市場の細分化が加速へ」は、大手保険ブローカー3社(マーシュ、エーオン、ウィリス)が中小企業向け事業から撤退し、これらの保険料が宙に浮いた状態になる場合、どのような影響が生じるかについて検証しています。
「セレントの予測では、マーシュ社は約11,000件の米国中小企業向け損害保険契約を解約すると見られ、その保険料収入は年間7,500万ドル(約81億円)に相当します。エーオン社とウィリス社も同様の行動をとるとすれば、解約対象となる保険契約件数は約2倍の計20,000件、保険料収入は1億4,300万ドル(約150億円)に達するでしょう」と、セレント保険プラクティスのシニアアナリストで今回のレポートの共著者であるドナルド・ライトは述べています。
「マーシュ社が解約する契約件数が予想を下回る可能性や、他の2社が解約の動きに追随しないことも考えられます。あるいは、これらの契約を一括して買い取る業者が出現するかもしれません。しかし、かなりの件数の契約を小規模ブローカーや独立代理店が奪うことになるでしょう」とコメントするのは、レポートの共著者でセレント保険プラクティスのマネージャーのマシュー・ジョセフォウィッツです。「こうした一連の動きにより、総額7億2,000万ドル(約770億円)に上る損害保険料が市場に流出する可能性がありますが、これは中小企業向け損害保険市場全体の約4%に当たります。このことは、企業向け保険会社にとって市場機会とまた同時に事業上の課題をもたらすと考えられます。すなわち、大量の契約が得られる少数の大手パートナーとのコミュニケーションチャネルに頼っていた状況から、扱う契約数の少ない中小代理店との取引が中心になるでしょう。こうした状況では、コミュニケーションやビジネスプラクティスを効率化しない限り、高いマージンは望めません。」
レポートでは、中小代理店はナショナル・ブランドよりも、商品の専門性や懇切なサービスに対して地域内で高い評価を受けている保険会社をより重視する傾向があると指摘しています。保険会社が競争力で勝るためには、優れた商品設計や(オンラインその他の)円滑なコミュニケーションチャネルを通じて高い評価を得ることが欠かせません。また、迅速な商品開発・調整、合理的な引き受けワークフロー、代理店向けオンラインコミュニケーションチャネルを実現するなど、システムサイドからも競争力の高さをサポートすることが求められます。
このレポートは、セレントが商業用保険市場や保険販売におけるテクノロジー活用について継続的に行なってきたリサーチをもとにまとめています。また、マーシュ社の発表があった週に、保険代理店や中小保険ブローカー20社以上が参加して行なったバーチャル・パネルの結果も紹介しています。彼らが新たな市場機会に何を期待しているのか、またそうした機会を最大限生かすため保険会社に何を求めているのかを明らかにしています。
このレポートは5つの図と2つの表を含む17ページで構成されています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2005年3月31日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。