バックオフィスでの小切手変換(BOC): 規模が小さすぎ、時期も遅すぎたか
Abstract
2007年3月にNACHA(電子決済の普及を進める米国の業界団体)が導入した「バックオフィスにでの小切手変換(BOC)」は、小売店店頭で利用される小切手数が減少しているにもかかわらず、小売業者から予想外に高い関心を集めています。しかし、BOCの導入時期が遅すぎたことは否めず、ACH(自動手形交換機構)による処理件数を大幅に増加させるには至っていません。
2007年3月の導入当初から、BOCの失敗を予測する声が多く聞かれました。実際のところ、1999年に導入された、小売店店頭での小切手変換(POP、Point of purchase)は長い間普及せず、NACHAが発表したBOCの第3四半期実績も予想外に低調な内容となっています。それでも、2007年から2008年にかけてあらゆる規模の小売業者の間で小切手変換システム(BOCおよびPOP)の導入が進むとみられます。ただ、小売店店頭での小切手利用の急速な減少が小売業者による電子小切手の利用拡大効果を相殺するため、BOCの導入はACH処理件数を大幅に増加させるには「規模が小さすぎ、タイミングも遅すぎた」といえるでしょう。
セレントは最新レポート「バックオフィスでの小切手変換(BOC): 規模が小さすぎ、時期も遅すぎたか」は、300社以上の小売業者の財務担当者を対象に2007年7月に行った調査の結果を明らかにしています。その結果、7年前に導入されたPOPの処理件数が伸び悩んでいるにもかかわらず、小売業者が小切手変換に予想外に高い関心を示していることがわかりました。主な結果は以下の通りです。
- BOCの導入から4ヶ月しか経過していない7月時点で、調査対象となった小売業者の約45%がBOCについて知っていた。一方、POPの認知度は導入後7年が経過した現時点で75%である。
- BOCについて知っていた財務担当者のうち67%はBOCに関心があると答えたのに対し、POPに関心があるとした回答者は60%にとどまった。
- 回答者のうち6%は小売業者による小切手変換を評価しており、電子小切手全般に対し好意的な評価をしている。
「皮肉なのは、BOCの導入をきっかけにPOPにも再び注目が集まっているという点です。POPが導入当初に受け入れられなかった一因として、『消費者が管理者となる』ように設計されており、消費者側の混乱と清算手続きの遅れに対する懸念があったことが挙げられます。しかし、POPの導入から7年を経て、消費者にとっての懸念要因はほとんど払拭されたといえるでしょう」と、セレントのシニアアナリストでレポートを執筆したボブ・ミーラは述べています。
小売業者の約60%は小切手照合および支払保証サービスを採用しており、照合プロセスの一環として店頭での小切手番号の取り込みを既に実践しています。従って、これらの小売業者がPOPを導入する際に新たなハードウェア投資は必要ありません。低コストでPOPを利用できるので、店舗ごとにわざわざBOC専用スキャナーを設置することを敬遠する可能性があります。
セレントは以下のように予測しています。
- 2007年以降、小売店での決済手段は小切手からACHに移行し続け、2010年には60%近くになるとみられる。
- 店頭で利用される小切手数は減少を続け、2010年にはPOS取引全体のわずか4%程度になる見通しである。その結果、変換対象となる小切手の減少に歯止めがかからなくなる。
- BOCおよびPOPシステムの普及拡大をきっかけに、小売業者による小切手変換は2009年にかけて急速に増加し、年間処理件数は約10億件に達するとみられる。しかし、2010年以降は店頭で利用される小切手数減少に伴い、処理件数も減少に転じよう。
- BOCに7年先行するという点で優位に立つPOPは、今後もリードを維持するだろう。「ウォルマート効果」による多大な影響力とFirst Dataの圧倒的な支配力がその成功を支えるとみられる。2010年までに小売業で利用される電子小切手の4分の3は
本レポートは23図と6表を含む38ページで構成されています。