保険業界におけるモバイルテクノロジー:ベンダーの姿勢と優先順位
Abstract
モバイルテクノロジーの普及が加速しています。スマートフォンの普及率は、わずか2年半の間に10%から40%に急上昇し、その普及スピードはTVを除くあらゆるテクノロジーを上回っています。タブレットはこれをさらに上回る勢いで普及しており、過去の基準を全て塗り替えています。
保険会社の間で、従業員、エージェントおよび顧客がモバイルからコア機能にアクセスできるシステムの構築をソフトウェアベンダーに依頼する動きが広がっています。しかし、実際にはどのベンダーに依頼すればいいのでしょうか。全てのベンダーがモバイルアプリケーションを手掛けているのでしょうか。モバイルアプリケーションの重要性に関するベンダーの認識は、保険会社と一致しているのでしょうか。また、ベンダーはどのような課題を抱え、将来に向けてどのような計画を立てているのでしょうか。
レポートでは、モバイルに対するベンダーの姿勢、モバイルソリューションの現状、ソリューションの実装方法および人員計画モデル、一般的な価格設定モデルを含むマーケティング関連の統計データ、モバイル市場に参入するベンダーが直面する課題などについて論じています。
今回はベンダー39社を対象に調査を行い、上記の疑問点、価格設定モデル、プラットフォーム投資、今後の市場動向の展望について聞きました。
ソフトウェアベンダーのIT責任者は、事業を推進する上でいかにモバイルが重要であるか明確に認識しています。調査対象企業のうち70%近くは、自社にとって現在モバイルは不可欠である、または重要であると回答しています。
現時点で、大部分のベンダーはモバイルアプリケーションで利益を上げていません。モバイルソリューションの料金は設定せず、ソフトウェア全体の価格にこれを含めているケースが多くなっています。ベンダー側にこうした料金体系を変えたい意向があることは明らかです。今後3年以内にはモバイル収入が全体の1~20%を占めると回答したベンダーは半数を超えています。
ベンダー各社は、中規模の保険会社向けを中心に、企業向けモバイルビジネスは底堅い成長と市場拡大が期待できるとみています。
しかし、モバイルテクノロジーの爆発的な拡大に伴い、この分野に進出するベンダーが様々な課題に直面していることは間違いありません。それらは、①テクノロジーおよびデバイスそのもの②組織変革およびカルチャー上の問題③市場への浸透と価格設定モデル―の3つのカテゴリーに分けられます。
「保険会社が新たなベンダーソリューションを選定する際には、評価プロセスの一環としてモバイル機能について調査するケースが増えています。モバイル市場への参入を目指すベンダーは、既にこの分野に進出している先行組の教訓を生かすことができるでしょう。いまだ計画の策定に至っていないベンダーは、今後のロードマップを描くところからスタートすればよいでしょう」とセレント保険グループのリサーチディレクターでレポートを執筆したカーリン・カーナハンは述べています。