世界的な信用危機がアジアのウェルスマネジメント市場に及ぼす影響
Abstract
世界的な信用危機はアジアのウェルスマネジメントの構造に変化をもたらしつつあります。様々な顧客セグメントで成長ペースが減速に転じ、ウェルスマネジメント関連の商品、プロバイダーおよびチャネルには大きな混乱が生じています。
未曾有ともいわれる信用危機が世界経済を揺るがしています。今回の信用危機は個人投資家の投資スタンスに多大な影響を及ぼすでしょう。世界に広がる新秩序 の恐ろしさを目の当たりした投資家にとって、これまで金融商品やサービスに対して抱いていた信頼感は懐疑心に変わりつつあり、中には完全に疑心暗鬼になっ ているケースもみられます。
ウェルスマネジメント業界は、ブラックボックス化した金融業界と消費者の橋渡しをする重要な役割を担っています。そのため、業界全体が今や極めて大きな逆風にさらされています。
アジアは世界の中で信用危機による打撃が最も少ないとはいえ、富に対する投資家の見解や行動は構造的な変化を見せています。これまで確実で当然と考えられていたことが、今では全て懐疑的に受け取られています。投資家は自らの投資行動の見直しを始めています。
セレントがアジア各地の市場参加者に取材したところ、地域によって状況に違いがあることがわかりました。アジアのウェルスマネジメント市場は決して一元的 に捉えることができません。極東アジアの日本、韓国および台湾、東南アジアのシンガポール、中東のアラブ首長国連邦の各市場は極めて先進的で成熟してお り、信用危機に対する反応は西洋の先進国とほぼ同じでした。一方、東南アジアのタイ、インドネシア、マレーシア、ベトナムのほか、中国やインドでは比較的 緩やかな反応にとどまっています。
「2008年第2四半期までは、アジアは欧米で広がった信用危機の影響をあまり受けないとの見方が有力でした。アジアの金融センターの多くは市況の悪化が 顕著化し始めており、アジア諸国の金融システムは概ね世界経済から『緩やかにデカップリング』しているという考え方はここにきて疑問視されています」とセ レントのアナリストでレポートを執筆したラビ・ナワルは述べています。