欧州の上場債券デリバティブ市場:新規参入組が脅威に
Abstract
規制の動向が不透明で、市場の構造が進化し続けるなか、欧州の金利先物・オプション市場に参入していない取引所にとってはビジネスチャンスが訪れています。
セレントの最新レポート「欧州の債券上場デリバティブ市場:新規参入組が脅威に」は、上場金利デリバティブ市場の新規参入プレーヤーについて分析しています。現在、この分野における欧州の主な取引所はNYSE Liffeとユーレックスです。欧州市場インフラ規制(EMIR)の導入に伴い、市場における上場デリバティブと店頭デリバティブの比率は変わる可能性があり、今後両者の区別はあいまいになるでしょう。欧州ではEMIRのほかにもバーゼルⅢや自己資本規制の施行が相次ぎ、店頭デリバティブの一部が上場デリバティブに移行する動きが出るとみられます。
市場の構造変化を受けて、現在店頭取引で行われている金利スワップ(IRA)は今後電子取引に移行し、①リクエスト・フォー・クォート(RFQ)を導入しているIRSの取引ベニューに送られ、高度にカスタマイズされた商品は二者間で売買執行される、② RFQを導入している取引ベニューに送られ、セルサイドによる標準化が可能な商品はそこで清算される、③オーダーブック方式をとるIRSの取引ベニューに送られ、標準化しやすい商品はそこで清算される―のいずれかの方法で取引されることになるとみられます。
出典:セレント
「プロバイダーは、店頭デリバティブの清算戦略を示すことで、競争上の優位を最大化しようとしています。同時に、新規制は多額の証拠金の確保を義務付けていますが、取引業者が必要な証拠金管理の体制を構築するまでにはなお数年かかるとみられます。そのため、主な取引所は証拠金管理および異種資産間のネッティングといった手続きを検討するようになるでしょう」とセレント証券グループのシニアアナリストでレポートの共同執筆者であるアンシュマン・ジャスワルは述べています。
「規制改正は、主要取引所に対抗して上場債券デリバティブ市場に新規参入するプレーヤーにビジネスチャンスをもたらしています。新たな競合相手の出現で、硬直した流動性に動きがみられるかもしれません」とシニアアナリストでレポートの共同執筆者のジョセフィン・ドゥ・シャズルネはコメントしています。
本レポートでは、欧州の債券デリバティブ市場の進化の可能性について考察しています。現状について概要を述べたあと、既に発表されている新たなプロジェクトを紹介し、最後に今後数年間の同市場の発展シナリオを示しています。
本レポートは28p、7図と3表で構成されています。