米国エネルギー取引市場の最新動向
Abstract
米国エネルギー市場の取引額は2001年の1兆8,000億ドル(約202億円)から2002年には1兆3,000億ドル(約146億円)に縮小しましたが、2006年には1兆7,000億ドル(約191億円)に迫る水準まで回復する見通しです。
米国におけるエネルギー取引額は、90年代末に飛躍的なペースで拡大したものの、2001年末から2002年にかけては、エンロンを皮切りにエネルギー取引企業の経営破たんが相次いだことから、急激な落ち込みを記録しました。それまで投資適格企業とみられていた大手エネルギー取引企業の退却は、金融市場においていかに信用力が重要であるかを認識させる教訓となりました。また、これ以外にも大きな問題が表面化し、市場への信頼は大きく揺らぎました。その結果として、天然ガスおよび電力市場の取引量は大幅な減少を示しました。セレントの最新レポート「米国エネルギー取引市場の最新動向」は、同市場の最近の回復状況を検証するとともに、市場の効率化と流動化を阻む要因について考察しています。
米国エネルギー市場の取引額は2001年の1兆8,000億ドル(約202兆円)から2002年には1兆3,000億ドル(約146兆円)に縮小しましたが、2006年には1兆7,000億ドル(約191兆円)の水準に近づくでしょう。とはいえ、短期取引市場の流動性は回復したものの、長期取引市場の回復ペースは遅れているのが現状です。「エネルギー業界は、将来も決して拭い去ることのできないスキャンダルのダメージからようやく回復し始めたところであり、この先数年間に及ぶ大幅な成長の態勢に入っています。」と、セレントの証券・投資グループのアナリストで上記レポートを執筆したアダム・ジョセフソンは述べています。
市場参加者は取引相手の信用リスクに関して細心の注意を払うようになり、NYMEX ClearPortといった取引・決済システムの導入が進んでいます。また、銀行などのリスク管理者やヘッジファンドに代表される投機筋のプレゼンスが高まり、従来、市場になかなか根付かなかった流動性、取引ノウハウ、リスクに関する高い知識などがもたらされた結果、価格の透明性も向上しています。最近の原油、ガソリン、ディーゼルの価格高騰に加え、原油および石油製品等の商品の価格上昇/変動幅の拡大傾向が強まる長期トレンドを背景に、とりわけヘッジファンドの市場参加が目立っています。
エネルギー取引の約17%は電子取引によるもので、中でも天然ガスの短期取引は電子取引の比重が極めて高くなっています。セレントは、エネルギー取引市場における電子取引の割合は2008年までに29%に達すると予測しています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2004年7月30日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照