医療貯蓄口座:この有望商品のポジショニング
Abstract
医療貯蓄口座(HSA)は銀行と保険の統合の動きに、新たな波をもたらすでしょう。銀行には利益を獲得する条件も失う条件も備わっています。HASは、何百万もの新規口座(2010年までに、新たに1,500万件)と何十億ドルもの預かり資産及び運用資産(2010年までに620億米ドル)を生み出すでしょう。
医療貯蓄口座(HSA)ほど大きな収益拡大が見込まれる金融商品は、他にはほとんど見当たりません。低コストの医療保険という選択肢を付与することで、HSAと高額自己負担プラン(HDHP)が組み合わされた商品が広く普及し、銀行・保険の双方にとって大幅な収益の構造変化をもたらすでしょう。その結果、2010年には医療保険料収入全体の約5%を正味受取利息、運用報酬、手数料収入などが占めると見られます。こうした分野のビジネス機会が大きく広がったことを裏付けるように、市場での地位やシェアの獲得を狙って様々なプレイヤーが参入し、多様な戦略を展開しています。
セレントの銀行プラクティスのマネージャーで今回のレポートを執筆したアレンカ・グリリッシュは、銀行はHSAの新規口座開拓だけでなくそれらの維持を含めた長期戦略の策定に取り組むべきだと提言しています。また、「銀行は、401k(確定拠出年金)とIRA(個人退職年金)という2つの先行分野で得た教訓を生かす必要があります。銀行がHSAビジネスに長期的に託した一部は、残高を増やしている口座保有者達のニーズを満たす多様な投資選択肢を提供することで、保証されるでしょう」
保険プラクティスのマネージャーでレポートの共同執筆者でもあるマシュー・ジョセフォウィッツは、「生命保険会社の中でも、特に個人向け商品に強みを持つ数社はすでに積極的にHSA/HDHP関連商品を投入していますが、いずれの生保もこの分野における戦略の構築を迫られています。とりわけ、急成長する同分野への本格的な参入を図る生保は、これら新商品のサービスやテクノロジー面への影響を十分に理解することが不可欠です」と述べています。
レポートでは、HSA急成長の背後にある市場の動向、銀行・保険会社からみたビジネス機会の可能性、そして市場の効率化に求められるサービスやテクノロジーの修正点などを検証しています。また、JPモルガン、メロン銀行、ウェルス・ファーゴ、HSAバンク(Webster Bank)、UnitedHealth、シグナ、Assurantなどの主要プレイヤーにおける早い段階での成果にも注目しています。
このレポートは17の図表を含む全32ページで構成されています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2005年8月31日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。