流動性リスク管理の新たな枠組み:ベストプラクティスの基盤を再構築
Abstract
(このレポートは2008年7月15日に英文で"The New Liquidity Risk Management Paradigm: Restructuring Foundations for Best Practices"というタイトルで発表されましたが、和訳版が2008年10月3日に発行されました。)
拡大するサブプライム危機の震源となっているのは流動性リスクであり、金融機関の経営陣、専門家、規制当局にとって、これまで過小評価されてきたこのリスクの管理が最優先課題として急浮上しています。
サブプライムローンを発端として2007年第3四半期に始まった市場の混乱はその継続期間、深さ、コストという点で、金融機関や世界経済全体にとって近年 で最も深刻な危機になると予測しています。この危機から学ぶべき最大の教訓は、金融仲介機能のパラダイム変化に応じて流動性リスクの管理プラクティスを見 直すという基本に立ち戻る必要があるという点です。多くの金融機関の財務内容は「預金で集めた資金を融資に充てる」という大前提から既に逸脱しているにも かかわらず、流動性リスクの管理手法はそれに合わせた進化を遂げているわけではありません。
最新レポート「流動性リスク管理の新たな枠組み:ベストプラクティスの基盤を再構築」は「今最も重要なリスク」につ いて、一般的なアプローチや落とし穴、ベストプラクティス、昨今の市場の混乱を踏まえた次の対応策などを含めて包括的に分析しています。新たな現実を認識 し、適切なリスク管理プラクティスを策定することで、数年後には確実に新しい市場標準へと収斂していくものとセレントはみています。
「流動性リスクの管理は固有の問題を伴うものであり、堅実なプラクティスを確立するためにはまず特定の基本原則を理解することが必要です。一般的なプラク ティスの主な問題点は、リスク選好度を設定する際に市場や金融機関固有の特性を軽視している点です。こうした経営レベルの問題に対しては、今後ますます関 心が高まるとみられます。同様に金融機関は、リスク選好度の決定要因となるストレステストやシナリオ分析の枠組みについても徹底的な見直しを迫られるで しょう」とレポートの共同執筆者であるUmit Kayaは述べています。
レポートでは、市場の混乱が始まる前と後に行った顧客調査や他の市場レポートの結果を参考に、以下の疑問について考察しています。
- リスク管理への適正な対応とはどのようなものか、また一般的にはどのような対応がとられてきたか。
- 流動性リスクを管理するための最適な枠組みとはどのようなものか。
取締役会や経営幹部は流動性リスク管理にいかに関与すべきか。 - 特にストレステストにおいて、流動性リスクの測定をめぐる最も緊急な課題は何か。
- 金融機関は、既存のリスク管理能力の評価と現行プラクティスの脆弱性の分析をいかに行っていくべきか。
流動性リスクの管理は、具体的に次の対策を模索している経営陣、新たな課題の多様な側面に注目する流動性リスクの専門家、金融機関の流動性エクスポージャーに関する最新状況を把握する必要のある市場参加者など、多くのステークホルダーの関心を集めるでしょう。
総じて、市場の勝者となれるのは迅速に自己防衛策を確立し、リスク抑制のためのしっかりした枠組みを構築していることを市場に示すことができる金融機関でしょう。
本レポートは21図と8表を含む全58ページで構成されています。