アジアにおける証券取引所の将来
Abstract
現下の金融危機は、アジアの証券取引市場にも多くの問題をもたらしています。売買高の伸び悩みにより証券取引所の収益は落ち込み、各取引所は新たなビジネス機会の開拓を迫られています。
セレントの最新レポート「アジアにおける証券取引所の将来」は、アジアの主要証券取引所が競争力を維持するためにとっている戦略を分析しています。短期的には売買高の成長率は減速し、競争激化に伴う収益の落ち込みにより利益率は低下するとみられます。しかしアジアの主要取引所は、長期戦略として株式上場、トレーディング、商品、市場データ、システムを含む多様な業務に注力する方針を打ち出しています。
世界的な景気後退、市場低迷および流動性の低下を背景に、アジアを含む世界の市場で株価や企業の資金調達能力が低下しています。アジアの証券取引所における新規株式公開(IPO)による資金調達額は2002〜2007年には年率35%のペースで増加しましたが、2008年は金融危機の影響により減少しました。大手証券取引所は、比較的小規模な新興市場を中心とする地域市場での事業に力を入れています。このような事業は、小国での企業上場を促進し、証券取引所にビジネス機会をもたらしています。急成長企業向けのオルタナティブ投資市場の開拓、クロスボーダー取引、イスラム金融商品の開発など、様々なプロジェクトが計画されています。同時に、各証券取引所は取引システムや機能を継続的に更新し、レイテンシの短縮やスピードの改善による投資家の利便性向上に努めています。
「金融危機を受けて、当面は計画されたプロジェクトの実行が遅れるケースもみられるでしょう。しかし、長期的にみればアジア経済のファンダメンタルズは底堅いといえます。アジアの新興国では経済発展に伴い長期的にIPOや売買高が加速的に増えるとみられ、アジアの証券取引所はそうした状況下で中心的な役割を果たすでしょう」とセレント証券プラクティスのアナリストでレポートを執筆したアリン・レイは述べています。
本レポートでは、アジアの証券取引所の収益源とその内訳を明らかにしています。また、今後の課題に焦点を当て、証券取引所がどのような進化を遂げていくかを考察しています。
本レポートは6図と1表を含む26ページで構成されています。