退職後の資産運用助言ビジネスへの自動化の導入:自動資産運用アドバイスサービス
Abstract
これまで運用会社とアドバイザーは、顧客の利益のため、顧客の資産のを拡大することをモットーにしてきました。しかし、長寿化が進み、定年退職時の資産を30年または40年にわたって少しずつ取り崩していくケースが増えるなか、このモットーはもはや当てはまらなくなってきています。退職後の期間が延びたことで、相続発生までの期間が長期化し、投資家の資金計画に資産の取り崩しを織り込むことが不可欠になっています。しかし、このように要求が厳しく、デジタルにも精通した顧客の期待に応えるためには、より時代に合ったアプローチが求められます。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | 退職後の資産運用(資産取り崩し)計画の策定は、なぜそれほど重要なのか? |
2 |
自動資産運用アドバイスサービスはどのようなメリットをもたらすか? |
3 | 退職後の資産運用(資産取り崩し)のアドバイスを行う既存プロバイダーは、自動資産運用アドバイスサービスの導入でどのようなメリットが得られるか? |
本レポートは、定年退職した投資家の資産運用(取り崩し)ニーズに対応するサービスで利益を上げるためには、資産運用アドバイスサービスの自動化をどのような形でどの程度まで進めればよいか考察しています。
「De-accumulation(資産の取り崩し)」は、資産の価値下落リスクヘッジおよび富の移管から資産の引き出しまでを含むもので、その取り扱いの難しさと収益性の問題から、運用アドバイザーがとかく避けがちだったテーマです。しかし、人口動態の変化に加え、経済および規制面からの要請が強まったことで、検討すべき要件は変わりつつあります。顧客側も、数十年に及ぶ定年退職後の余生(それに伴う医療費)を支える資金の確保に余念がなくなってきています。特に社会保障費、企業年金、さらには確定拠出年金(401k)といった長期的な退職貯蓄制度にはシステミックリスクがあるだけに、そうした動きが広がっています。
現在、運用アドバイザー、そして彼らを雇用する証券会社、資産運用会社、保険会社は、コストの嵩む販売体制を合理化する手段の1つとして、自動資産運用アドバイザリーサービスの導入を検討し始めています。導入すれば、これが顧客のライフサイクル全般を通じて直接の接点となるため、長期的な顧客関係の管理が必要となる金融機関の関心を集めています。
自動資産運用アドバイザリーサービスは伝統的なアドバイザリーモデルを破壊するものですが、人的介入の有無という視点からその影響の大きさを測るべきではありません。資産取り崩しを含む退職後の資産運用をめぐる意思決定は非常に複雑で(子世代への資産移管をどのように進めるのが最善なのか)、感情的な負担も大きい(余生を送るのに十分な資産が蓄えられたか)ことから、当面は対面式の面談が必要になると考えられるからです。
従って、定年退職後の投資家(および定年退職後に備えている投資家)をターゲットとする自動資産運用アドバイザリーツールはアドバイザーの代わりをするのではなく、アドバイザーが面談時に補助的に使用することになるでしょう。
このようにバーチャルとフィジカルを組み合わせた販売モデルの採用は、マス富裕層やミレニアム世代の顧客を多く取り込みたいアドバイザーの潜在的な需要に支えられ、さらに広がっていくとみられます。
「自動化されたサービスを拒絶する、あるいはこれに抵抗する動きは既に後退し、今ではこれを理解し、受け入れる機運が台頭しつつあります。むしろ、資産取り崩しをめぐるビジネスチャンスからすると、アドバイザーがこうしたハイブリッドモデルの「旗手」になる日も近いといえるでしょう」とセレント証券グループのシニアアナリストでレポートを執筆したウィリアム・トラウトは述べています。