ブラジルの債券市場:電子化への遠い道のり
Abstract
ブラジルでは、まだ電子取引が始まったばかりです。同国の場合、電子取引がより効率的かつ経済的となる水準まで債券流通市場の流動性および競争環境を整えることが最大の課題となっています。
最新レポート「ブラジルの債券市場:電子化には遠い道のり」は同市場の発展状況について、電子取引の進化に焦点を当てて分析しています。
ブラジルの社債市場は、債券保有者が償還期限まで保有する一面的な市場であるため、流動性と流通市場の取引が限られています。一方、国債市場は比較的成熟しています。国債の1日の平均売買高は、社債の約15倍に匹敵します。セレントの推計では、2012年の国債流通市場の売買高に占める電子取引の割合は5.7%、社債市場では 2.4%とみられます。また、ブラジルの債券取引は寡占化も進んでおり、トップ6社による取引が全体の半分以上を占めています。中でも、多くの個人顧客を持つ国内銀行が支配的な立場にいます。
一方、同国の金利デリバティブ市場は非常に流動性が高く、金利先物取引の2012年の1日平均売買高は約650億ドルで、国債の約530億ドル、社債の約4億ドルをいずれも上回っています。新興諸国の中でもブラジル市場が注目に値するのは、デリバティブ市場で取引される商品の大部分が上場されている点で、デリバティブ取引全体の約95%を上場デリバティブが占めています。
「ブラジルの債券市場は、金融機関が電子取引システムに投資するメリットを確信できるにはまだ程遠い状況にあります。流通市場での競争が高まれば、債券市場における電子取引の普及を促すきっかけになるでしょう」とセレント証券グループのアナリストでレポートを共同執筆したムラリダール・ダザールは述べています。
「流通市場の流動性が高まれば、債券発行能力が向上し、有効性の高いヘッジ取引も可能になるでしょう。流通市場の規模と厚みが増すにつれ、電子取引のメリットがより生かせる環境が整うはずです」と、シニアバイスプレジデントでレポートの共同執筆者である アクセル・ピエロン はコメントしています。
レポートでは冒頭でブラジルの債券市場の概要を示し、債券商品の取引動向を分析しています。次に、電子取引をめぐる世界的な規制改正の動きや新興市場で急速に進むシステム普及状況を明らかにし、同国での電子取引の成長性を予測しています。