保険におけるデジタル戦略:中国からの教訓
Abstract
中国のトレンドから判断すると、保険分野のデジタル戦略はアナリティクスと自動化を軸に策定するのが望ましいといえるでしょう。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | 中国市場のトレンドからみて、保険分野のデジタル戦略はどうあるべきか? |
2 |
保険会社のデータ利用をめぐり、将来どのようなパラダイムシフトが予想されるか? |
3 | 保険会社は、今後登場するディスラプティブな競争相手にどう対抗すべきか? |
持続可能なデジタル戦略の柱となるのはアナリティクスと自動化です。これにより、カスタマイズされつつ全てのチャネルで統一感をもったユーザー経験を提供することを目指します。
保険業界は、今後他のセクターとのディスラプティブな競争にさらされる可能性があります。これらのセクターは消費者に関する大量のデータを蓄積し、既に分析テクノロジーを使って消費者行動の把握し、カスタマイズされた商品・サービスの提供を実現しています。この新規参入者との競争に備えるには、保険会社は顧客重視かつ分析主導型のデジタル戦略を理解する必要があります。外部データの取得、社内外のデータの統合、データ分析といった能力に加え、分析結果に基づいて顧客にカスタマイズされた有益なサービスを提供する能力を持つ保険会社が将来の勝者となるでしょう。
レポートではデータ、分析、自動化、顧客エンゲージメント、ユーザー経験に関する課題も取り上げています。
「これからは、過去のデータより、リアルタイムのデータ、内部データより外部データの方が重要性を増すとみられます。また、サンプル調査ではなく、全データを調査対象とする方法がより重視されるようになるでしょう。保険会社は、時代のビジネスチャンスを取り込むべく、パラダイムシフト、新たな体制づくり、新機能の構築をいかに進めるか検討すべきでしょう」とアジア金融サービスグループのシニアアナリストでレポートを執筆したウェンリ・ユアンは述べています。
保険会社は業界全体のエコシステムを常に注視し、自社のポジションと価値を大局的に捉える必要があります。一方で、最新テクノロジーにも注意を払い、それらが業務にどのような変化をもたらすかも認識しておくべきでしょう。
レポートで提案している戦略は中国の市場トレンドの分析結果に基づいたものであり、北米や欧州・中東・アフリカ地域とは状況が異なるかもしれません。しかし、戦略の中には他の地域より進んでいるものもあり、他の地域にとってなお参考となる点もあるはずです(例えば、提携相手の複雑なエコシステムや顧客エンゲージメントに関する革新的なアプローチなどの戦略)。中国のビジネスモデルについては、7月15日発行のレポート「中国保険業界におけるデジタルを利用したビジネスモデルのイノベーション」で詳しく説明しています。
本レポートは保険会社への提案を示すものであり、その対象は「デジタル思考」を生かして業界にイノベーションをもたらしている中国の保険会社だけでなく、オンライン環境をフルに活用し業務を展開する他の国の保険会社も含まれます。
レポートには1表と6図が掲載されています。